節句の和菓子の意味とは?五節句ごとの行事菓子を徹底解説

節句の和菓子の意味とは?五節句ごとの行事菓子を徹底解説 和菓子と文化

最終更新: 2026-05-14

日本には年5回の「節句」があり、それぞれに特別な和菓子が用意されてきました。江戸幕府が五節句を公式な式日として制定して以降、約400年にわたり「行事菓子」を食べる習慣が武家から町人層まで浸透し、現在まで受け継がれています。

「柏餅はなぜ端午の節句に食べるの?」「桃の節句に菱餅を飾る理由は?」「そもそも五節句ってどんな行事?」。節句と和菓子の関係を疑問に感じたことがある方は少なくないはずです。この記事では、五節句すべての行事菓子について、その意味・由来・地域による違いを網羅的に解説します。まず節句の基本知識を押さえたうえで、各節句の和菓子を一つずつ紹介し、地域差や和菓子職人の視点、さらに現代の楽しみ方までお伝えします。

節句と和菓子の関係とは?基本をわかりやすく解説

節句(せっく)とは、季節の変わり目に邪気を払い、無病息災や五穀豊穣を祈る年中行事のことです。もともとは中国から伝わった暦の考え方で、奇数が重なる日(1月7日、3月3日、5月5日、7月7日、9月9日)を特別な日としていました。

江戸幕府はこの5つの節句を「五節句」として公式に制定し、武家社会の行事としました。やがて町人の間にも広まり、それぞれの節句にふさわしい料理や菓子を用意する風習が定着したのです。

項目 内容
起源 中国の陰陽五行説に基づく暦の考え方
制度化 江戸幕府が公式な式日(祝日)として制定
目的 季節の邪気を払い、健康・繁栄を祈願する
特徴 各節句に固有の植物・食べ物・行事がある
和菓子との関係 節句ごとに縁起の良い菓子を食べる習慣が発展

節句に和菓子が欠かせない理由は、菓子そのものに「願い」が込められているからです。素材の選び方、形、色の一つ一つに子孫繁栄や厄除けといった祈りが反映されており、単なるお供え物ではなく「食べることで願いを体に取り込む」という日本独自の信仰観がそこにあります。

和菓子の歴史や起源を振り返ると、平安時代の唐菓子に始まり、江戸時代の節句制度とともに行事菓子が各地で発展した流れが見えてきます。

五節句一覧と代表的な和菓子

五節句とそれぞれの行事菓子を一覧で見てみましょう。

節句名 日付 別名 代表的な和菓子・行事食 象徴する植物
人日(じんじつ) 1月7日 七草の節句 七草粥、花びら餅 七草
上巳(じょうし) 3月3日 桃の節句・ひなまつり 菱餅、桜餅、ひなあられ
端午(たんご) 5月5日 菖蒲の節句 柏餅、ちまき 菖蒲
七夕(しちせき) 7月7日 笹の節句 索餅(さくべい)、そうめん
重陽(ちょうよう) 9月9日 菊の節句 菊の和菓子、栗きんとん、着せ綿

このように、五節句にはそれぞれ意味を持つ和菓子や行事食が対応しています。次のセクションから、各節句の和菓子を詳しく見ていきましょう。

人日の節句(1月7日)の和菓子:花びら餅と七草粥

人日の節句は五節句の始まりにあたる行事で、新年の無病息災を祈る日です。「人日」とは「人の日」を意味し、中国の古い暦では1月7日を「人を占う日」としていました。日本では七草粥を食べる習慣が広く知られています。

この節句の和菓子として注目したいのが「花びら餅」です。正式名称を「菱葩餅(ひしはなびらもち)」といい、平安時代の宮中行事「歯固めの儀式」にルーツを持ちます。白い求肥の上に紅色の菱餅と白味噌餡、甘く煮たごぼうをのせて半月形に折りたたんだ菓子で、裏千家では初釜の菓子として欠かせない存在です。

菓子名 花びら餅(菱葩餅)
由来 平安時代の「歯固めの儀式」
主な材料 求肥、白味噌餡、ごぼうの蜜煮
込められた意味 長寿(歯を丈夫にする=長生きの象徴)
食べる時期 1月上旬〜中旬

花びら餅に使われるごぼうは、もともと鮎の代わりとされています。宮中の正月行事では固いものを食べて歯を丈夫にする「歯固め」が行われ、鮎が供されていましたが、時代の流れでごぼうに代わったとされています。紅白の配色は慶事を、長いごぼうは長寿を表しています。

花びら餅の意味と作り方については、別の記事で由来から本格レシピまで詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

上巳の節句(3月3日)の和菓子:菱餅・桜餅・ひなあられ

上巳の節句は「桃の節句」や「ひなまつり」として親しまれ、女の子の健やかな成長を祈る行事です。もともとは中国の風習で、3月最初の巳の日に水辺で身を清めて厄を払う行事でした。日本に伝わってからは紙や草で作った人形(ひとがた)に穢れを移して川に流す「流し雛」の風習と結びつき、やがて雛人形を飾る現在のひなまつりへと発展しました。

上巳の節句を代表する和菓子は3種類あります。

菱餅は、ひな壇に飾る菱形の三色餅です。紅(赤)・白・緑の3色にはそれぞれ意味があります。赤は「魔除け」と「桃の花」、白は「清浄」と「残雪」、緑は「健康」と「新緑」を表しています。この三色を重ねることで「雪の下から新芽が芽吹き、桃の花が咲く」という春の情景を表現しているのです。

意味 象徴するもの
紅(赤) 魔除け・生命力 桃の花、くちなしの実
清浄・子孫繁栄 残雪、菱の実
健康・厄除け 新緑、よもぎ

桜餅は、塩漬けの桜の葉で餅を包んだ春の和菓子です。桜の葉の香りには「クマリン」という成分が含まれ、防腐作用があるとされています。関東風の「長命寺」は小麦粉の薄い皮でクレープ状に包むタイプ、関西風の「道明寺」は道明寺粉のつぶつぶ食感が特徴です。

ひなあられは、関東では米を爆ぜて作ったポン菓子風の甘いタイプ、関西ではもち米を揚げた塩味のおかきタイプが主流です。紅・白・緑の三色に加え、黄色を入れて四季を表現するものもあります。

端午の節句(5月5日)の和菓子:柏餅とちまき

端午の節句は「菖蒲の節句」ともいい、男の子の健やかな成長と立身出世を祈る行事です。「端午」とは「月の初めの午(うま)の日」を意味し、5月の最初の午の日に行われていた行事が、やがて5月5日に固定されました。

端午の節句の和菓子といえば、柏餅とちまきの2つが代表格です。

柏餅は、上新粉の餅にあんこを挟んで柏の葉で包んだ菓子です。柏の木は新しい芽が出るまで古い葉が落ちないという性質を持っており、「家系が途絶えない」「子孫繁栄」の象徴とされてきました。武家社会において家の存続は最も重要な関心事であり、この縁起の良さから端午の節句には柏餅を食べる習慣が広まりました。

項目 柏餅 ちまき
主な材料 上新粉の餅、あんこ、柏の葉 もち米(または葛粉)、笹や茅の葉
込められた意味 子孫繁栄・家の存続 厄除け・邪気払い
主な地域 関東を中心に全国 関西を中心に西日本
由来 江戸時代に武家社会で発展 中国の詩人・屈原の故事

ちまきは中国の故事に由来しています。紀元前の中国で、楚の国の詩人・屈原が政治に絶望して汨羅江(べきらこう)に身を投じた際、民衆が屈原の霊を慰めるために粽を川に投げ入れたという伝説があります。この故事にちなんで「厄除け」「邪気払い」の意味が込められ、日本に伝わりました。

関東では柏餅、関西ではちまきが主流という地域差があります。これは柏の木が関東に多く自生していたことや、ちまきの文化が京都の宮中行事とともに西日本で根付いたことに由来します。

柏餅の本格的な作り方を知りたい方は、材料の選び方から包み方のコツまで詳しく解説した記事をご覧ください。

七夕の節句(7月7日)の和菓子:索餅と七夕の練り切り

七夕の節句は、織姫と彦星の伝説で知られる行事ですが、もともとは中国の「乞巧奠(きっこうでん)」という技芸の上達を祈る祭りが起源です。日本古来の「棚機津女(たなばたつめ)」の伝承と結びつき、現在の七夕行事が形作られました。

七夕の行事菓子として歴史的に重要なのが「索餅(さくべい)」です。索餅は奈良時代に中国から伝わった唐菓子の一種で、小麦粉と米粉を練って縄のようにねじった揚げ菓子です。古代中国に「7月7日に亡くなった帝の子が疫病を流行らせ、生前好物だった索餅を供えたところ収まった」という伝説があり、そこから七夕に索餅を食べると1年間無病息災で過ごせるとされました。

『延喜式』(927年)には、宮中の七夕の儀式に索餅が供え物として記録されています。時代が下るにつれて索餅はそうめんへと変化していきましたが、これは索餅とそうめんの形状が似ていたこと、そうめんが織姫の織り糸に見立てられたことなどが理由とされています。

項目 索餅(さくべい)
起源 奈良時代に中国から伝来した唐菓子
形状 小麦粉と米粉をねじった縄状の揚げ菓子
込められた意味 無病息災(疫病除け)
現代の行事食 そうめんに変化(七夕そうめん)
記録 『延喜式』(927年)に宮中供物として記載

現代では索餅そのものを食べる習慣はほぼ失われていますが、老舗和菓子店の中には七夕の時期に索餅を復刻して販売するところもあります。また、七夕をモチーフにした練り切りや、天の川を表現した錦玉羹(きんぎょくかん)など、季節の上生菓子として七夕を楽しむ方法は現代にも受け継がれています。

上生菓子とは何かを知りたい方は、種類や特徴をまとめた記事も参考にしてみてください。

重陽の節句(9月9日)の和菓子:菊の練り切りと栗きんとん

重陽の節句は五節句の中で最も知名度が低いものの、古来は「最も重要な節句」とされていました。陰陽思想では奇数を「陽」の数とし、最大の陽数「9」が重なる9月9日は特に強い力を持つ日と考えられていたのです。

この節句は「菊の節句」とも呼ばれ、菊酒を飲んで長寿を願う行事が行われてきました。前日の夜に菊の花に綿をかぶせ、翌朝の露を含んだ綿で体を拭くと若返るとされた「着せ綿」の風習は、平安時代の貴族文化を伝える雅な慣習です。

重陽の節句に食べる和菓子としては、菊をかたどった練り切りが代表的です。黄色や白、紫の練り切りで菊の花を精巧に表現し、長寿への祈りを込めます。また、9月は栗の旬でもあることから、栗きんとん(栗を裏ごしして茶巾絞りにした和菓子)も重陽の節句にふさわしい菓子として親しまれています。

菓子名 特徴 込められた意味
菊の練り切り 菊花をかたどった上生菓子 長寿・不老
栗きんとん 栗を裏ごしして茶巾絞りにしたもの 豊穣・実りの秋
着せ綿(きせわた) 菊の露を含んだ綿を模した菓子 若返り・延命
菊酒 菊の花びらを浮かべた日本酒 邪気払い・長寿

栗きんとんの作り方については、レシピを詳しく紹介した記事がありますので、秋の手作り和菓子に挑戦したい方はそちらもご覧ください。

節句和菓子の地域差:関東と関西で何が違う?

節句の和菓子には、関東と関西で顕著な違いが見られます。これは歴史的背景や気候、入手できる素材の違いに起因しています。和菓子職人の世界では、こうした地域差を理解したうえで、その土地の風土に合った菓子を作ることが重視されています。

節句 関東 関西
上巳(3月3日) 長命寺桜餅(小麦粉の薄皮) 道明寺桜餅(道明寺粉のつぶつぶ食感)
上巳(3月3日) ひなあられ(ポン菓子風・甘い) ひなあられ(もち米おかき・塩味)
端午(5月5日) 柏餅が主流 ちまきが主流
端午(5月5日) 柏餅のあん:こしあん・味噌あん 柏餅のあん:つぶあん中心

端午の節句での関東・関西の違いは特に顕著です。関東で柏餅が主流になった理由は、柏の木が関東の丘陵地帯に多く自生していたことと、「家系が途絶えない」という柏の葉の縁起が武家社会の中心地・江戸で好まれたことにあります。一方、関西のちまきは京都の宮中行事の伝統を引き継いだもので、中国由来の厄除けの意味を大切にしてきました。

桜餅の関東・関西の違いも興味深いところです。関東の「長命寺」は、1717年に向島(東京都墨田区)の長命寺門前で、桜の落ち葉を活用して考案されたと伝えられています。一方、関西の「道明寺」は、大阪の道明寺で作られていた保存食「道明寺粉」をもち米の代わりに使った菓子で、こちらもお寺の名前に由来しています。

こうした地域差は、和菓子職人を目指す方にとって重要な知識です。和菓子職人になるには何が必要かを解説した記事では、修行先の選び方について地域の菓子文化との関わりにも触れています。

和菓子職人から見た節句菓子の魅力

和菓子職人にとって節句菓子の制作は、技術力と季節感、歴史への理解が求められる仕事です。一年のなかでも節句の前後は特に忙しい時期であり、各節句に向けた菓子の仕込みは数日前から始まります。

現場で大切にされているのは、見た目の美しさだけでなく、「意味を正しく形にする」ことです。たとえば菱餅の三色の順番を間違えると、春の情景を表現できなくなります。柏の葉の表裏を正しく使い分けること(味噌あんは葉の裏を外側に、小豆あんは葉の表を外側にする慣習がある地域もあります)も、意味を理解した職人ならではの気配りです。

近年は、伝統的な節句菓子に現代的なアレンジを加える動きも広がっています。菱餅をムース仕立てにしたものや、七夕の錦玉羹に天の川を表現したもの、重陽の節句に合わせた菊花のフラワーケーキ風練り切りなど、SNS映えを意識しつつも節句の意味を大切にした菓子が若い世代に支持されています。

和菓子職人として節句菓子に向き合うには、歴史と文化の知識に加えて、茶道と和菓子の関係への理解も欠かせません。特に人日の節句の花びら餅は、茶席の菓子として重要な位置を占めています。

節句の和菓子に関するよくある質問

Q1: 五節句以外にも行事菓子はありますか?

はい、五節句以外にも多くの行事菓子があります。たとえば、七五三の千歳飴、お彼岸のおはぎ・ぼたもち、お月見の月見団子、冬至のかぼちゃを使った菓子などが代表的です。また、[七五三の千歳飴の由来](https://wagashi-do.jp/wagashi-culture/shichigosan-chitoseame-yurai/)については当サイトでも詳しく紹介しています。

Q2: 節句の和菓子はいつ頃から和菓子店に並びますか?

一般的に、各節句の2〜3週間前から店頭に並び始めます。端午の節句の柏餅であれば4月中旬頃から、上巳の節句の桜餅や菱餅は2月中旬頃から見かけることが多いです。人気店は予約制の場合もあるため、早めに問い合わせるのがおすすめです。

Q3: 柏餅の葉は食べても大丈夫ですか?

柏の葉は食べることを想定して作られていないため、一般的には食べずに剥がして中の餅だけを食べます。ただし、誤って少量を食べてしまっても健康上の問題はありません。一方、桜餅の桜の葉は食べることができます。

Q4: 重陽の節句があまり知られていないのはなぜですか?

明治政府が五節句の制度を廃止した際、他の節句はひなまつりや子どもの日として復活しましたが、重陽の節句だけは現代の祝日と結びつかなかったためです。また、旧暦の9月9日は現在の10月中旬にあたり、新暦に合わせた9月9日ではまだ菊の盛りではないという季節のずれも、認知度が低い一因とされています。

Q5: 節句の和菓子を手作りするなら、初心者は何から始めるとよいですか?

初心者には「柏餅」がおすすめです。上新粉を練って蒸し、あんこを包んで柏の葉で巻くだけなので、特別な道具がなくても作れます。餅が冷めると固くなりやすいため、蒸し立てを手早く包むのがコツです。基本的な和菓子の道具については[初心者向けの道具ガイド](https://wagashi-do.jp/wagashi/wagashi-dougu-shoshinsha/)で紹介しています。

Q6: 「菓子」と「果子」の違いは何ですか?

もともと「菓子」は木の実や果物を指す言葉で、「果子」と同じ意味でした。奈良時代に中国から「唐菓子」が伝わり、砂糖や小麦粉を使った加工品を指すように意味が変化していきました。現在の和菓子の原型が生まれたのは、砂糖が比較的手に入りやすくなった江戸時代のことです。

まとめ:節句の和菓子を知ると、日本の四季がもっと豊かになる

節句の和菓子には、何百年もかけて受け継がれてきた日本の「祈り」が込められています。ここで要点を振り返りましょう。

  • 五節句(人日・上巳・端午・七夕・重陽)それぞれに、縁起の良い行事菓子が用意されてきた
  • 柏餅は「子孫繁栄」、菱餅の三色は「春の情景」、索餅は「無病息災」など、菓子一つ一つに明確な意味がある
  • 関東と関西で同じ節句でも異なる和菓子が食べられており、地域の歴史が反映されている
  • 重陽の節句は現代では知名度が低いが、菊の練り切りや栗きんとんで楽しむことができる
  • 節句菓子の伝統は現代のアレンジにも受け継がれ、新しい形で次世代に伝わっている

まずは次に訪れる節句(7月7日の七夕、9月9日の重陽)に合わせて、その節句の和菓子を味わってみてはいかがでしょうか。近くの和菓子店で節句菓子を探してみたり、自宅で手作りに挑戦してみたりすることで、日本の四季をより深く感じることができるはずです。

和菓子業界の最新データや市場動向に興味がある方は、和菓子業界の統計まとめページでも情報を公開しています。

参考情報

  • 国立国会図書館「本の万華鏡 第25回 あれもこれも和菓子 — 第2章 和菓子をめぐる風俗」(ndl.go.jp)— 和菓子と年中行事の歴史的関係の検証に使用
  • 一般社団法人 日本の節句文化を継承する会「五節句について」(go-sekku.org)— 五節句の定義・制度化の経緯の検証に使用
  • 全国和菓子協会「色々な和菓子の説明」(zenkaren.info)— 行事菓子の種類と特徴の検証に使用
  • 全国乾麺協同組合連合会「七夕・そうめんの日」(kanmen.com)— 索餅と延喜式の記載の検証に使用
  • 一般社団法人 日本人形協会「端午の節句 — 粽と柏」(ningyo-kyokai.or.jp)— 柏餅・ちまきの由来の検証に使用



コメント

タイトルとURLをコピーしました