毎年1月、全国の和菓子老舗が一斉に「干支菓子」「花びら餅」「縁起物」の限定品を並べる——お正月は1年でもっとも和菓子が輝く季節です。農林水産省「工業統計調査」2022年によると、和生菓子の出荷額は年間約4,745億円にのぼり、その消費は季節行事と深く結びついています。新年を彩る和菓子はその象徴的な存在です。
「お年賀に何を選べばいい?」「花びら餅はどこで買えるの?」「2027年(未年)の干支菓子はどう選ぶ?」——正月の和菓子選びは選択肢が多く、迷う方も少なくありません。
本記事では、花びら餅の由来と選び方から干支菓子の入手方法、お年賀・手土産の選び方、そして老舗の限定情報まで、お正月の和菓子に関するすべてをまとめました。読み終わる頃には、2027年のお正月に向けた和菓子選びに自信が持てるようになります。
お正月の和菓子とは?日本の新年を彩る甘味文化

お正月(1月1日〜松の内の終わりまで)は、日本の和菓子文化において最も重要な時期のひとつです。茶道の「初釜(はつがま)」、神社仏閣への初詣の供え物、親族への手土産(お年賀)など、和菓子はあらゆる正月の場面に登場します。
日本では古くから「歳神様(としがみさま)」をお迎えするお正月に、特別な食べ物を神棚に供え、家族で祝う文化が根付いています。和菓子もその文化の一端を担い、縁起や季節感を菓子という形で表現してきました。
場面別:お正月の和菓子一覧
| 場面 | 代表的な和菓子 | 意味・用途 |
|---|---|---|
| 茶道の初釜 | 花びら餅 | 宮中「歯固めの儀」が起源。長寿・縁起の象徴 |
| 新年のお祝い | 干支菓子(練り切り・落雁) | 翌年の干支をかたどった縁起物 |
| お年賀・手土産 | 羊羹・最中・落雁 | 日持ちがよく、格式ある贈り物として |
| 神棚・仏壇のお供え | 紅白饅頭・鏡餅型の菓子 | 神仏への感謝と祈願 |
| 家族の食卓 | きんとん・上生菓子 | お正月の特別感を演出 |
| お年賀の手土産 | 老舗の詰め合わせ | 品格のある贈り物として重宝される |
松の内の期間と地域差
お正月の「松の内」は地域によって終わりの時期が異なります。関東では1月7日(七草がゆの日)が松の内の終わりとされ、関西では1月15日(小正月)まで続くとする地域が多い。和菓子店の正月限定品の販売期間もこれに合わせており、「花びら餅」「干支の生菓子」は多くの場合1月15日前後で終売となります。早めの入手・予約が基本です。
花びら餅——お正月の代表格、茶道の初釜に欠かせない伝統菓子

花びら餅の歴史と由来
花びら餅(はなびらもち)の起源は、平安時代の宮中行事「歯固めの儀(はがためのぎ)」にあります。元旦から3日間、大根・鮎・鏡餅など歯ごたえのあるものを食べることで「歯を固める=長寿を祈る」という宮中行事から生まれた縁起の食べ物です。
この宮中の行事食「菱葩(ひしはなびら)」は、長い歴史をかけて和菓子として発展しました。老舗のとらや(虎屋)には、元禄3年(1690年)に菱葩を御所にお納めした記録が残っており、江戸時代にはすでに現在に近い形で存在していたことがわかります。
明治時代になると、裏千家(うらせんけ)が毎年1月の初釜(その年最初のお茶会)に「花びら餅」を使うようになり、これが全国の茶道家・茶道愛好者に広まりました。現在では、茶道の世界では1月の定番菓子として確固たる地位を占めています。
花びら餅の構成要素と意味
花びら餅は、白い求肥(ぎゅうひ)で包んだ独特の形が特徴です。その内側に込められた一つひとつの素材にも意味があります。
| 材料 | 意味・縁起 |
|---|---|
| 白い求肥(表の部分) | 「雪のような清らかさ」で新年の清々しさを表す |
| 紅色の求肥(内側) | 「紅白」の縁起色で慶事を祝う |
| 白味噌あん | 上品な甘みと白さ——「長寿」の意味が込められている |
| ごぼう(蜜煮) | 「土の中で深く根を張る」ことから「長命」「地に足がついた生き方」を象徴。邪気払いの意味も |
完成した花びら餅を横から見ると、長いごぼうが内側に入った様子が「矢(邪気払いの道具)」のようにも見えることから、縁起物としての意味合いが強まっています。
花びら餅の選び方・主な販売時期
多くの老舗では12月下旬から1月15日ごろまで花びら餅を販売します。生菓子のため賞味期限は3〜5日程度と短く、特に人気の老舗品は予約が必要な場合もあります。
体験として——毎年1月2日、近くの和菓子店に立ち寄って花びら餅を購入するのを習慣にしている方は多いでしょう。棚に整然と並んだ白い花びら餅を見るだけで、「今年も新年が来た」という実感が湧いてきます。白い求肥の向こうから透けて見える紅色と、かじったときに広がる白味噌の上品な甘み——お正月にしか味わえない特別な体験です。
2027年(未年)の干支菓子——羊・ひつじをデザインした縁起物

2027年は「未年(ひつじどし)」です。正式には十干十二支で「丁未(ひのと・ひつじ)」と表し、60種類ある干支の組み合わせの44番目にあたります。
未(ひつじ)は、群れで行動し穏やかに過ごす動物として、「平和・調和・家族の団らん」を象徴するとされています。また「豊穣」「温かいつながり」を意味するとも言われ、和菓子店では白・クリーム色・淡いグリーンを基調にした可愛らしいひつじをデザインした作品が多く登場します。
干支菓子の種類と特徴
| 種類 | 特徴 | 賞味期限の目安 | こんな方に |
|---|---|---|---|
| 練り切り(干支意匠) | 生菓子・鮮やかなデザイン | 製造から3〜5日 | お茶席・その場で食べる用 |
| 落雁(干支型) | 干菓子・精巧な型抜き | 1〜2ヶ月 | お供え物・遠方への贈り物 |
| 煎餅(干支柄) | 干菓子・ギフト向き包装が多い | 1〜3ヶ月 | 気軽なお年賀・職場配布用 |
| 羊羹(干支パッケージ) | 日持ち抜群・老舗ブランドが人気 | 真空パック1年以上 | 目上の方へのお年賀 |
| 最中(干支型) | 中〜高価格帯。詰め合わせが多い | 2〜4週間 | 格式あるギフト |
干支菓子の入手時期と購入方法
全国の和菓子専門店・老舗では、毎年秋ごろ(10〜11月)から翌年の干支菓子の企画・制作が始まります。販売は12月初旬〜1月末ごろが中心です。
- **生菓子(練り切り)**: 賞味期限が短いため、地元の和菓子店で年始に直接購入するのがベスト。人気店は売り切れることもあるため12月中に予約を。
- **干菓子(羊羹・落雁・最中)**: 通販でも購入可能。老舗の予約は12月初旬から始まることが多く、早めにチェックを。
お年賀・手土産に選ぶ——格式・予算・日持ち別ガイド
お年賀(1月1〜15日に贈る新年の挨拶品)として和菓子を選ぶ際は、「相手との関係(格式)」「予算」「日持ち」の3つの軸で選ぶのが王道です。
格式・予算別 おすすめ和菓子
| 相手・場面 | 格式 | おすすめ和菓子 | 予算目安 |
|---|---|---|---|
| 目上の方・上司・得意先 | 最高格 | とらやの羊羹・干支羊羹・特選詰め合わせ | 5,000〜10,000円 |
| 親戚・親しい知人 | 中〜高格 | 老舗の詰め合わせ・花びら餅 | 2,000〜5,000円 |
| 友人・同僚 | 普通 | 干支煎餅・可愛い最中・ミニ羊羹 | 1,000〜3,000円 |
| 子どものいる家庭 | カジュアル | 干支をかたどった練り切り・彩り豊かな詰め合わせ | 500〜2,000円 |
日持ちで選ぶ
正月のお年賀は年始の挨拶と合わせて渡すため、「郵送」か「訪問」かで日持ちの考え方が変わります。
- **訪問して手渡し**: 花びら餅(生菓子・3〜5日)や上生菓子が華やか。ただし早めに食べていただく前提で。
- **郵送・持ち帰りがある場合**: 羊羹(真空パック・1年以上)、落雁(2〜3ヶ月)、最中(2〜4週間)が安心。
- **職場配布(複数人向け)**: 個包装の干支煎餅・和菓子の詰め合わせが配りやすく人気。
のし紙のマナー
お年賀ののし紙は「赤白の蝶結び(花結び)」が基本です。結び目が何度でも解けて結び直せる蝶結びは「繰り返しめでたいことが続く」縁起の表れ。表書きは「御年賀」または「謹賀新年」とします。
1月15日(小正月)を過ぎてしまった場合は「寒中御見舞」に変えましょう。和菓子の専門店やデパートでは持参するだけでのし掛けをしてもらえます。
全国老舗のお正月和菓子——格式と歴史が生む特別な一品
とらや(東京・赤坂/京都・一条店 ほか全国)
室町時代後期の京都で創業したとらや(虎屋)は、後陽成天皇(在位1586〜1611年)の御代から御所御用を務めてきた日本最高峰の和菓子老舗です。元禄3年(1690年)には菱葩(はなびら餅の原形)を御所にお納めした記録があり、お正月の和菓子との縁は300年以上続いています。
お正月の主な限定品:
- 花びら餅(1月のみ・12月下旬〜1月15日ごろ販売)
- 干支羊羹(12月〜1月。2027年はひつじをあしらったデザイン)
- 干支の生菓子(12月中旬〜1月中旬)
予約は12月上旬〜中旬から受付開始。公式サイトや直営店、百貨店催事で購入可能です。
鶴屋吉信(京都・今出川 ほか)
享和3年(1803年)、初代吉兵衛が京都の上京区で創業した京菓子の名門。220年以上にわたり、京都御苑の近くで菓子作りを続けています。
花びら餅は白味噌あんのまろやかさと求肥のもちもちとした食感が格別で、茶道家からの支持が特に厚い一品です。東京は日本橋三越をはじめ、全国主要百貨店の催事でも購入できます。
長門(東京・日本橋)
享保年間(1716〜1736年)に創業した老舗で、将軍家にゆかりの深い「江戸風御菓子司」として知られています。現在は日本橋に店舗を構え、「くず餅」「切り羊羹」など江戸の菓子文化を伝える銘菓を取り扱っています。正月期間はお年賀向けの詰め合わせが充実しており、江戸の伝統を感じる贈り物として人気です。
地方老舗もチェック
各都道府県にも正月限定の干支菓子・花びら餅を展開する老舗が数多くあります。お正月の和菓子は地元の老舗を訪れる良い機会でもあります。
- 京都の老舗については「[京都の和菓子老舗ガイド](https://wagashi-do.jp/famous-shops/kyoto-wagashi-shinise/)」をご参照ください。
- 東京の老舗情報は「[東京の和菓子老舗まとめ](https://wagashi-do.jp/famous-shops/tokyo-wagashi-shinise/)」もあわせてどうぞ。
お正月の縁起物和菓子一覧——意味と由来を知るともっと楽しい
お正月の和菓子に込められた意味を知ることで、「なぜこの菓子を正月に食べるのか」「なぜ贈るのか」がわかり、選ぶ楽しさが増します。
| 和菓子 | 縁起・意味 | 主な形態 |
|---|---|---|
| 花びら餅 | 長寿・歯固め・縁起(詳細は前章参照) | 生菓子(1月限定) |
| 干支菓子 | その年の十二支をかたどった縁起物。新年の幸運を呼ぶ | 生菓子・干菓子 |
| 紅白饅頭 | 「紅白」は慶事の基本色。祝い・厄除け・長寿 | 生菓子・半生菓子 |
| 鏡餅型の菓子 | 年神様へのお供え物の象徴。「年を重ねる」意味も | 干菓子 |
| 松竹梅の意匠 | 「歳寒三友(さいかんさんゆう)」——寒さに強い松・竹・梅が縁起物 | 生菓子・干菓子 |
| きんとん(金団) | 「金の団子」として財運・豊かさを象徴 | 上生菓子 |
| 落雁(干支型) | お供え物・茶席の定番。白・金の色が縁起色 | 干菓子 |
| 黄色の菓子(金色) | 金運・豊穣を象徴。正月の縁起色として重宝される | 各種 |
知っておきたい:「きんとん」の2つの意味
お正月に混同しやすいのが「きんとん」の種類です。おせち料理の「栗きんとん(くりきんとん)」は栗と芋を使った料理ですが、和菓子の「きんとん」は別物。茶道でも使われる上生菓子の一種で、そぼろ状のあんを丸めた形です。秋〜冬に多くの和菓子店で販売され、「財運の金」をイメージした黄色いきんとんはお正月向けの人気商品です。
お正月の和菓子を自宅で楽しむ——手作りのすすめ
年末年始に子どもと一緒に干支の練り切りを作ったり、花びら餅に挑戦したりする家庭も増えています。手作りの和菓子は、和菓子文化を身近に感じる絶好の機会です。
花びら餅の手作り概要
花びら餅の詳しいレシピは「花びら餅の意味と作り方ガイド」をご参照ください。
手作りの基本手順:
1. 求肥(白玉粉・砂糖・水)を電子レンジまたは鍋で作る
2. 白味噌あん(白あん・白みそ・砂糖)を作る
3. ごぼうを甘く蜜煮にする(お正月の1〜2週間前から仕込むと余裕が出る)
4. 紅色の求肥と白い求肥を重ねて「花びら」の形に整え、あんとごぼうを包む
求肥の作り方については「求肥とは?作り方完全ガイド」もあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. お正月の和菓子で最も代表的なものは何ですか?
茶道の世界では「花びら餅」が1月の定番として最も知られています。一般家庭や贈り物では、「干支菓子」「紅白饅頭」「羊羹」「落雁」なども正月らしい和菓子として広く親しまれています。
Q2. 花びら餅はどこで買えますか?購入時の注意点は?
全国の和菓子老舗・デパートの催事・オンラインショップで購入できます。とらや・鶴屋吉信・仙太郎など人気の老舗品は早期に完売することが多いため、12月中に予約するのがおすすめです。生菓子のため賞味期限は3〜5日程度。届いたら早めにいただきましょう。
Q3. 2027年(未年)の干支菓子はいつから販売されますか?
例年、前年12月初旬〜中旬から販売が始まります。2027年の未年(ひつじ)の干支菓子は2026年12月から順次登場します。生菓子は地元の和菓子店で年始に、干菓子(落雁・羊羹)は通販でも購入可能です。
Q4. お年賀の和菓子の予算はどのくらいが適切ですか?
目上の方や取引先へは3,000〜10,000円が一般的です。親戚や親しい知人には2,000〜5,000円、友人・同僚には1,000〜3,000円が目安。贈る相手との関係性に合わせて選ぶことが大切です。和菓子の老舗では予算を伝えると相談に乗ってくれる場合も多いです。
Q5. お正月の和菓子はいつまで販売されますか?
多くの店で松の内(関東:1月7日、関西:1月15日)前後に終売となります。花びら餅や干支の生菓子は特に終売が早い傾向があります。一方、羊羹・落雁などの干菓子は在庫がある場合は1月末ごろまで購入できることもあります。
Q6. 子どもへのお年賀に適した和菓子は何ですか?
お菓子が好きなお子さんには、干支をかたどった可愛い練り切り(見た目が楽しい)や、個包装の干支煎餅(配りやすい)がおすすめです。小さい子どもがいる家庭へは、親しみやすい可愛いデザインの半生菓子の詰め合わせも喜ばれます。
Q7. 花びら餅にごぼうが入っている理由は?
ごぼうは「土の中で深く根を張る」ことから「長命・地に足がついた生き方」を象徴する縁起物とされています。また「ごぼうの矢のような形が邪気を払う」という意味合いもあります。蜜煮にして甘く仕上げているため、ごぼう独特の風味はほとんど感じられず、シャキシャキとした食感が花びら餅のアクセントになっています。
関連記事: 【2026年】9月の和菓子おすすめ完全ガイド|重陽の節句・中秋の名月・秋彼岸まで季節の菓子を総まとめ
関連記事: 今週の和菓子ニュースまとめ【6/8〜6/14】
関連記事: 今週の和菓子ニュースまとめ【6/15〜6/21】
まとめ——2027年のお正月は和菓子で新年を彩ろう
お正月の和菓子は、日本の伝統文化と職人の技が凝縮された特別な存在です。今回のポイントをまとめます。
- **花びら餅**: 平安時代の宮中行事が起源。裏千家の初釜で定番化した「1月限定の縁起菓子」。12月中に老舗に予約するのがベスト
- **干支菓子**: 2027年は未年(ひつじ)。生菓子は地元店で、干菓子・羊羹は老舗オンラインショップでも購入可能
- **お年賀・手土産**: 「格式×予算×日持ち」の3軸で選ぶ。のし紙は赤白蝶結び・表書きは「御年賀」
- **老舗の選び方**: とらや(室町時代創業)・鶴屋吉信(享和3年/1803年創業)・長門(享保年間創業)など、格式と歴史を確認して選ぶ
新年の特別な場面に、和菓子がもつ意味や縁起を大切に、季節の甘味を楽しんでみてください。
冬の和菓子全般については「冬の和菓子ガイド」も合わせてご覧ください。和菓子の選び方の基本は「和菓子の選び方ガイド」もご参考にどうぞ。
参考情報
- 農林水産省「工業統計調査」2022年(和生菓子出荷額)
- 株式会社虎屋 公式ウェブサイト(元禄3年の御所納め記録)
- 日本あんこ協会「花びら餅の起源と現代の消費傾向」
- 裏千家茶道 初釜と花びら餅の歴史(各茶道文化情報)
- 2027年(丁未)の干支情報(日本郵便株式会社 年賀状情報)


コメント