松風とは?同じ名前でも京都と岐阜で全く違う和菓子の理由

松風とは?同じ名前でも京都と岐阜で全く違う和菓子の理由 和菓子の種類

最終更新: 2026-11-01

「松風」という名前の和菓子は、日本各地に存在します。ところが京都で松風を買って岐阜や熊本の松風を思い出すと、材料も見た目もまったく違うことに驚くはずです。この記事では、名前の由来となった京都・亀屋陸奥の松風の歴史から、岐阜・熊本・東京・沖縄に伝わる「別物の松風」まで、一次資料で確認しながら解説します。

松風とは?基本情報を一覧で確認

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松風(まつかぜ)は、小麦粉を主原料に焼き上げる干菓子・焼き菓子の一種で、表面にケシの実を散らして焼くものが多いのが特徴です。ただし「松風」という名前は特定の一種類の菓子を指すのではなく、京都・岐阜・熊本・東京・沖縄など各地で由来も材料も異なる菓子に、別々に使われてきました。

項目 内容
分類 焼き菓子・干菓子(地域により異なる)
名前の由来となった店 亀屋陸奥(京都、創業1421年)
共通点 表面にケシの実を散らすものが多い
地域差 材料・厚さ・製法が地域ごとに大きく異なる
主な産地 京都府・岐阜県・熊本県・東京都・沖縄県など

共通点として挙げられるのは「ケシの実を振りかけて焼く」という製法だけで、原材料や厚さ、味は地域によってまったく異なります。本記事ではまず名前の由来となった京都の松風を解説し、続いて各地の「別物の松風」を紹介します。

名前の由来:石山本願寺と織田信長の合戦

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松風という名前の起源は、京都・亀屋陸奥(創業1421年)が伝える歴史にあります。元亀元年(1570年)から11年間続いた石山合戦(織田信長と石山本願寺の戦い)の際、本願寺御用達の菓子司だった亀屋陸奥の3代目・大塚治右衛門春近が、籠城中の兵糧代わりとして考案した菓子がもとになったと伝えられています(亀屋陸奥公式サイト「松風」、goodold.tabicamp.com「全国各地の松風」、2026-11-01確認)。

信長と本願寺が和睦した後、本願寺の宗主・顕如上人が詠んだ和歌が名前の由来になったとされています。

> わすれては波のおとかとおもうなり まくらにちかき庭の松風

この歌にある「松風」という言葉から菓銘が付けられたと伝わります。歌の意味は「(城を囲んでいた軍勢がいなくなり)忘れていたが、枕元近くの庭に吹く松風の音を、遠くの波の音かと思うほど静かになった」という平穏への感慨とされています。この逸話は司馬遼太郎の小説『燃えよ剣』『関ヶ原』にも登場します(ippin.gnavi.co.jp「京都の老舗『亀屋陸奥』の銘菓『松風』」、2026-11-01確認)。

亀屋陸奥の松風は、小麦粉・砂糖・麦芽飴・白味噌を混ぜ合わせて自然発酵させた生地を直径約45.5センチの大きな鉄鍋で焼き上げ、短冊状に切り分けて作られます。特別な品種には白味噌の代わりに浜納豆を使う「西六條寺内松風」もあります(亀屋陸奥公式サイト、2026-11-01確認)。

地域ごとに別物の松風:岐阜・熊本・東京・沖縄

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ここが松風という菓子の最大の特徴です。京都発祥の松風とは別に、各地で独自に発展した「同名だが別物」の松風が複数存在します。代表的な4地域を比較します。

地域(店) 創業 材料・製法 特徴
岐阜県岐阜市(長崎屋本店) 享保5年(1720年) 小麦粉・水飴・砂糖。卵は使用せず、糀白味噌を加えた「本家味噌松風」もある 宝暦3年(1753年)正月に2代目が考案。仕込みから3日間かける手作りの焼き菓子
熊本県菊池市(松風本家 正観寺丸宝) 明治30年(1897年) 良質な小麦粉と甜菜糖が主原料 厚さ1.2ミリの「日本一薄い和菓子」。南北朝時代に京都から伝わり、菊池の地で現在の薄さになったとされる
東京都台東区・浅草(亀十) 大正末期 黒糖を使った蒸しカステラ風の皮でつぶ餡を包む 京都・熊本の松風とは系統が異なる独立した創作菓子。蒸し皮の木目が松の木肌に見えることが名前の由来とされる
沖縄県(マチカジ) – 小麦粉・砂糖・卵・食紅・ごま 生地を結び切りの形にして2度焼く。縁結びの意味を持ち、結納の祝い菓子として使われる

(出典:goodold.tabicamp.com「全国各地の松風」、長崎屋本店公式サイト・shinise.tv「岐阜一番の老舗和菓子店 長崎屋本店」、travel.yahoo.co.jp「松風本家 正観寺丸宝」・nlab.itmedia.co.jp「熊本の“日本一薄い和菓子”」、brutus.jp「浅草〈亀十〉」、discoverjapan-web.com「沖縄県那覇市南島製菓の『松風』」、2026-11-01確認)

岐阜の松風は夏目漱石の小説『虞美人草』にも登場する銘菓で、卵を使わず小麦粉と水飴だけで作る点が京都の松風と大きく異なります(gokinjyoai.org「漢隣堂 長崎屋本店」、2026-11-01確認)。熊本の松風は厚さわずか1.2ミリという極薄の焼き菓子で、南北朝時代に菊池一族が京都から持ち帰った文化がもとになったと伝わりますが、これは京都の亀屋陸奥とは異なる系統の伝来説です。東京・亀十の松風は蒸し菓子で、公式の由来情報として京都・熊本との系統的なつながりは確認できませんでした。沖縄のマチカジ(松風)も独自に発展した菓子で、結び切りの形と縁結びの意味という、他地域には見られない特徴を持っています。

なお、弘前市にも松風を扱う老舗がありましたが、2024年5月31日に閉店しており、現在は購入できません(弘前経済新聞「弘前の『開雲堂』閉店 145年の歴史に幕」、2026-11-01確認)。地域ごとの松風は個人商店や小規模な老舗が多く、入手できる時期や販売継続状況が変わりやすい点にも注意が必要です。

なぜ同じ名前が複数の菓子に使われているのか

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松風という名前が複数の菓子に使われている理由は、各地域が独立してこの名前を採用したためで、単一の起源から各地に伝播したわけではないとみられます。熊本の松風は「京都から伝わった」とする説がありますが、岐阜・東京・沖縄の松風については、京都の亀屋陸奥との直接的な系統関係を示す一次資料は確認できませんでした。

「松風」という言葉自体が、焼き菓子の表面の質感や色合いを松の木肌に見立てた、和菓子に古くからある命名パターンの一つと考えられます。類似の例として、焼き色や質感を自然物に見立てる菓銘は和菓子全体に広く見られる手法です(亀屋陸奥公式サイト、brutus.jp、2026-11-01確認)。

経済産業省の経済構造実態調査(2022年、品目編)によると、岐阜県の和生菓子出荷額は約67億円で、都道府県別では全国25位にあたります。岐阜の松風のような江戸時代から続く焼き菓子づくりも、こうした地場の和生菓子産業の一部として現在まで続いています。

松風に関するよくある質問

Q1: 松風はどこで買えますか?

京都の松風は亀屋陸奥(下京区)、岐阜の松風は長崎屋本店(岐阜市)、熊本の松風は松風本家 正観寺丸宝(菊池市)で購入できます。いずれも店頭のほか、オンラインショップでも販売されています(各店公式サイト、2026-11-01確認)。

Q2: 松風とカステラは違う菓子ですか?

はい、別の菓子です。京都・岐阜の松風は小麦粉・砂糖・水飴(または味噌)を使った焼き菓子で、卵を使うカステラとは製法・材料が異なります。一方、東京・亀十の松風は蒸しカステラに近い生地でつぶ餡を包んだ菓子で、これは系統の異なる松風の一種です。

Q3: 松風に賞味期限はどれくらいありますか?

水分の少ない焼き菓子のため、常温で2週間前後保存できる商品が多いですが、店舗や商品によって異なります。購入時に各店の表示を確認してください。

まとめ:松風のポイント

  • 松風は特定の一種類の菓子ではなく、京都・岐阜・熊本・東京・沖縄でそれぞれ材料も製法も異なる菓子に使われている名前
  • 名前の起源は京都・亀屋陸奥が伝える、石山合戦(1570〜1580年)の兵糧菓子と、和睦後に顕如上人が詠んだ和歌
  • 岐阜(長崎屋本店、1720年創業)は卵を使わない小麦粉と水飴の焼き菓子、熊本(正観寺丸宝)は厚さ1.2ミリの日本一薄い和菓子
  • 東京・亀十の松風は蒸しカステラ風、沖縄のマチカジは結び切りの縁結び菓子で、京都・熊本の系統とは別物
  • 岐阜県の和生菓子出荷額は全国25位(経済産業省調査、2022年)で、松風のような焼き菓子づくりが地場産業として続いている

和菓子の名前と由来の違いについては、和菓子の種類を徹底解説でも分類方法や代表銘菓を紹介しています。合わせてご覧いただくと、松風が和菓子全体のどの位置づけにあるかがより理解しやすくなります。

参考情報

  • 亀屋陸奥公式サイト「松風」(https://www.kameyamutsu.jp/products/matsukaze/)
  • goodold.tabicamp.com「全国各地の松風」(https://goodold.tabicamp.com/matsukaze/)
  • ippin.gnavi.co.jp「司馬遼太郎の小説にも登場する京都の老舗『亀屋陸奥』の銘菓『松風』」(https://ippin.gnavi.co.jp/article-12413/)
  • shinise.tv「岐阜一番の老舗和菓子店 長崎屋本店が作る、岐阜名産 松風」(https://shinise.tv/nagasakiyahonten-gifu/)
  • gokinjyoai.org「『味噌松風』漢隣堂 長崎屋本店」(https://gokinjyoai.org/kinka/meiten/5834/)
  • travel.yahoo.co.jp「松風本家 正観寺丸宝」(https://travel.yahoo.co.jp/kanko/spot-00031780/)
  • nlab.itmedia.co.jp「熊本の“日本一薄い和菓子”が話題」(https://nlab.itmedia.co.jp/research/articles/3865057/)
  • brutus.jp「浅草〈亀十〉『じゃない方』のあんこ菓子」(https://brutus.jp/post-54800/)
  • discoverjapan-web.com「沖縄県那覇市南島製菓の『松風』」(https://discoverjapan-web.com/article/147477)
  • 弘前経済新聞「弘前の『開雲堂』閉店 145年の歴史に幕」(https://hirosaki.keizai.biz/headline/2337/)
  • 経済産業省・総務省「経済構造実態調査」2022年、品目編 — 都道府県別の和生菓子出荷金額(e-Stat 政府統計の総合窓口、https://www.e-stat.go.jp/)



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