和菓子職人は女性でもなれる?活躍事例3選と年収相場を解説

和菓子職人は女性でもなれる?活躍事例3選と年収相場を解説 和菓子職人キャリア

最終更新: 2026-09-13

「和菓子職人」と聞くと、白い和帽子をかぶった職人歴数十年の男性をイメージする人がまだ多いかもしれません。実際、全国和菓子協会が優れた技術者を認定する「選・和菓子職」の制度が始まった平成19年(2007年)第1回の認定者19名の名前を見ると、女性とみられる名前はほとんど見当たりませんでした。ところが直近の令和6年(2024年)第12回の認定者10名の中には、片山菜摘さんや伊藤彩乃さんといった女性とみられる名前が複数確認できます。約17年の間に、業界の風景は確実に変わりつつあるのです。

とはいえ「和菓子職人に女性はなれるのか」「体力的にきつくないか」「結婚・出産後も続けられるのか」といった不安を抱えて一歩を踏み出せずにいる方も少なくないでしょう。この記事では、公的データと実際に活躍する女性職人・女将の事例をもとに、女性が和菓子職人を目指す際の現状、なり方、両立の工夫、キャリアアップの道筋までを順番に解説します。まずは業界の現状データから見ていきましょう。

和菓子職人の世界に女性は少ない?現状をデータで見る

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和菓子職人には国が定める「女性は不可」といった資格制限は一切ありません。国家資格である製菓衛生師も、都道府県知事が実施する試験に合格すれば性別を問わず取得できます。全国製菓衛生師養成施設協会などの発表によれば、製菓衛生師試験の合格率はおおむね70〜90%台で推移しており、性別による合格率の公的な区分は公表されていません。つまり「試験の難易度」という意味では女性が不利になる制度は存在しないのです。

一方で、業界の「見え方」には歴史的な偏りがありました。エッセイストの田丸みゆき氏がコラムで紹介しているように、創業300年規模の老舗の中には「女の子は和菓子職人になれない」という慣習が長く残っていた店もあったといいます。こうした慣習は近年になって見直されつつあり、下の表のように業界を代表する認定制度の顔ぶれにも変化が表れています。

実施回(年) 認定者数 名前から確認できる女性の傾向
第1回(平成19年/2007年) 19名 女性とみられる名前はほぼ確認できず
第12回(令和6年/2024年) 10名 片山菜摘さん・伊藤彩乃さん・今福木乃香さん・錦織恵実さんなど複数確認

※出典: 全国和菓子協会「選・和菓子職 優秀和菓子職認定者一覧」公表名簿を編集部が確認(2026年9月時点)。氏名から性別を推定したものであり、公式な男女比の統計ではありません。

なお、和菓子職人そのものの男女比を国勢調査などで単独に切り出した公的統計は現時点では公開されていません。そのため「女性は何パーセント」と断定的に言い切れるデータは存在しない、というのが正直なところです。ただし、パート・アルバイトの求人市場を見ると、女性が参入しやすい実態がうかがえます。求人ボックスの集計(2026年9月時点)では「和菓子 パート」の求人数は5,553件、平均時給は1,160円で、製造職に絞ると3,555件・平均時給1,140円となっています。令和8年度の地域別最低賃金は全国加重平均1,177円(都道府県により10月1日〜12月2日の間に順次発効予定)であるため、和菓子パートの時給は全国平均をやや下回る水準ですが、未経験からでも応募しやすい間口の広さがうかがえます。

女性が和菓子職人を目指す3つのルート

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女性が和菓子職人を目指す場合も、基本的なルートは男性と変わりません。ただし家庭との両立や将来設計に応じて、選びやすいルートには傾向があります。

ルート 特徴 向いている人
製菓専門学校からの就職 1〜2年で基礎技術と製菓衛生師受験資格を取得できる 学生・第二新卒で本格的に技術を身につけたい人
未経験求人からの転職 老舗や企業の求人に応募し、働きながら技術を学ぶ 社会人経験があり、まず現場で適性を見たい人
パート・アルバイトからのステップアップ 短時間勤務から始め、正社員登用や独立を目指す 子育て中など、勤務時間の融通を優先したい人

専門学校を経由するルートの詳細は「和菓子の専門学校おすすめ7選」で学費やカリキュラムを比較しています。未経験からの転職を具体的に考えている方は「和菓子職人になるには?未経験から目指す3つのルート」も参考にしてください。パート・アルバイトから始めたい方は「和菓子のパート求人完全ガイド」で時給相場や仕事内容を詳しく解説しています。

三つ目のパート経由のルートは、特に子育て中の女性にとって現実的な入口になっています。求人ボックスの集計では和菓子パートの求人のうち販売職が2,542件を占めており、まず接客・販売から入って製造の技術を学んでいく流れも一般的です。

女性ならではの強みが活きる仕事内容

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和菓子職人の仕事は大きく「製造(餡炊き・生地づくりなどの土台作業)」と「意匠(練り切りなどの上生菓子のデザイン・仕上げ)」に分かれます。このうち意匠の分野では、季節の花や風物を繊細に表現するセンスが求められ、性別を問わず個人の感性と技術力が評価の軸になります。

実際、報道によると愛知県豊橋市の老舗「お亀堂」(昭和25年創業)では、芸術大学のデザイン科出身の石川未紗さんが月替わりの上生菓子のデザインと仕上げを担当し、父親とともに100種類以上の商品を開発してきました。SNSで「映える」と話題になった商品も多く、美術的な素養を活かしたデザイン力が強みとして評価されている例です。

> 報道によれば、石川さんは大学4年の秋に膠原病の一種である「成人スチル病」という難病で倒れ、全身のリンパが腫れる症状を経験したといいます。それでも和菓子作りを続け、シングルマザーとして子育てをしながら職人として活動を続けている姿は、体力面での不安を抱える人にとっても一つの指標になるでしょう。

このように、上生菓子(じょうなまがし、茶道の濃茶に合わせる最上級の生菓子)の意匠面では、力仕事以上に繊細な手先の技術とデザインセンスが問われます。専門用語や技法については「和菓子用語集」でも解説していますので、あわせて確認してみてください。

結婚・出産・育児との両立というハードルとリアルな工夫

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和菓子職人の仕事でよく挙がる不安が、早朝からの仕込みと繁忙期の長時間労働です。「和菓子職人はきつい?早朝5時・年収366万円の実態と対策」でも解説した通り、老舗の個人店では早朝5時前後からの仕込みが一般的で、これは性別を問わず体力的な負担になります。

一方で、業態によって働き方の融通は大きく異なります。

業態 勤務時間の特徴 両立のしやすさ
老舗個人店(製造中心) 早朝出勤・繁忙期は長時間になりやすい 家族経営でない場合は融通が利きにくい傾向
企業メーカー・工場 シフト制で交代勤務が可能な場合が多い 時短勤務・週数日勤務の制度がある企業も
百貨店催事・販売職 日中〜夕方が中心で早朝出勤は少ない 育児中でも比較的両立しやすい
個人での独立・開業 自分で営業時間を設計できる 準備期間はハードだが軌道後は裁量が大きい

先述のシングルマザーとして働く石川さんの例のように、家業や小規模店舗では家族の協力体制が両立の鍵になるケースが多く見られます。一方、企業系の製菓メーカーでは時短勤務やシフト制を導入しているところもあり、まずは自分がどの業態でキャリアを築きたいかを明確にすることが、両立を考えるうえでの最初の一歩になります。

実際に活躍する女性職人・女将の事例

数字だけでは伝わらない「実際にどう活躍しているか」を、報道で紹介されている3つの事例で見てみましょう。

#### 榊萌美さん(五穀祭菓をかの/埼玉県桶川市、1887年創業)

日経ウーマンの記事によると、榊さんはもともとギャル系アパレルブランドの販売員として働いていましたが、大学2年生のときに母親が入院したことをきっかけに家業の跡継ぎ問題に直面します。小学校の卒業式のビデオで自分が「実家を継ぐ」と話していた映像を見返したことが決意のきっかけとなり、大学を中退して20歳で家業に入社、134年続く老舗の六代目女将になりました。

#### 石川未紗さん(お亀堂/愛知県豊橋市、昭和25年創業)

前述の通り、芸術大学出身のデザイン力を活かして月替わりの上生菓子を手がけ、難病を抱えながらもシングルマザーとして職人を続けています。伝統的な技法に現代的なデザイン感覚を掛け合わせたアプローチが、SNS世代の新しい和菓子ファンを獲得している好例です。

#### 吉村由依子さん(亀屋良長/京都、1803年創業)

東洋経済オンラインの記事によると、フランス料理を学んだ経歴を持つ吉村さんは、創業223年(2026年時点)の老舗の若女将として、経営危機や伝統との衝突、家族の病といった複数の試練に直面しながら店の立て直しに取り組んできました。異業種での経験を老舗経営に持ち込む視点は、未経験から和菓子業界に入る人にとっても参考になる事例です。

3つの事例に共通するのは、いずれも「和菓子一筋」ではないバックグラウンド(アパレル販売、美術大学、フランス料理)を持ちながら和菓子の世界に飛び込み、それぞれの強みを活かして活躍している点です。未経験であることは決して不利な条件ではなく、むしろ異業種での経験がデザインや経営の新しい発想につながるケースが多いといえます。

女性が和菓子職人としてキャリアを築く・独立するには

キャリアを築くうえで気になるのが年収と将来の選択肢です。「和菓子職人の年収・給料を徹底解説」で詳しく解説していますが、経験年数によって収入は大きく変わり、経験を積むほど収入の伸びしろがあるのが実情です。将来的に独立を考える場合、「和菓子屋の開業資金はいくら?」で費用内訳と資金調達方法をまとめています。

キャリアの選択肢 特徴 向いている人
老舗・企業で技術を極める 修行期間は長いが、伝統技術を体系的に習得できる じっくり技術を磨きたい人
家業を継ぐ(婿入り・嫁入り含む) 経営と製造の両方に関わることが多い 経営にも関心がある人
独立開業する 自分の店・ブランドを持てる裁量の大きさが魅力 デザイン力や商品開発力に自信がある人
企業の商品開発職に転身する 製造技術を活かして企画・開発側に回る道もある 技術と企画の両方を活かしたい人

修行期間の目安や年次別のロードマップは「和菓子職人の修行期間は何年?」で解説しているので、長期的なキャリア設計の参考にしてください。

よくある質問

Q1: 和菓子職人に女性はなれますか?

なれます。製菓衛生師などの関連資格に性別による制限はなく、全国和菓子協会の技術認定制度「選・和菓子職」の認定者にも女性の名前が確認できます。老舗の中には歴史的に女性の入職を制限していた店もありましたが、近年は見直しが進んでいます。

Q2: 女性の和菓子職人の割合はどれくらいですか?

和菓子職人単独の男女比を示す公的統計は2026年9月時点で公開されていません。ただし、パート・アルバイトの求人市場では女性が応募しやすい環境が整っており、そこから正社員・職人へステップアップする例も見られます。

Q3: 未経験の女性でも和菓子職人になれますか?

なれます。本記事で紹介した女性職人・女将の事例も、アパレル販売や美術大学、フランス料理といった異業種出身が中心です。未経験から挑戦できる求人も多く、パートから始めて技術を学ぶルートも一般的です。

Q4: 出産・育児をしながら和菓子職人を続けられますか?

業態によって両立のしやすさは異なります。企業メーカーや百貨店の販売職はシフト制で融通が利きやすい一方、老舗個人店の製造現場は早朝勤務が中心になるため負担が大きくなる傾向があります。家族の協力体制や勤務先の制度を事前に確認することが重要です。

Q5: 女性が和菓子職人として独立する場合、費用はどれくらいかかりますか?

店舗の規模や立地によって大きく異なりますが、開業資金の内訳や資金調達方法については「[和菓子屋の開業資金はいくら?](https://wagashi-do.jp/wagashi-3/wagashiya-kaigyo-shikin/)」で具体的な費用相場を解説しています。

Q6: 女性の和菓子職人におすすめの資格はありますか?

国家資格である製菓衛生師の取得がまず基本になります。取得ルートや試験の難易度については「[和菓子の資格の種類を徹底解説](https://wagashi-do.jp/wagashi-3/wagashi-shikaku-shurui/)」で一覧比較しています。

関連記事: 和菓子職人の独立完全ガイド|修行年数と4つの開業パターン

関連記事: 和菓子職人は高卒でもなれる?学歴不問の実態と2つの進路

まとめ:和菓子職人は女性でも十分に活躍できる道

  • 製菓衛生師や「選・和菓子職」など、和菓子職人に関わる資格・認定制度に性別の制限はない
  • 全国和菓子協会の認定者名簿を見ても、近年は女性とみられる名前が増える傾向にある
  • 未経験からアパレル販売・美術大学・フランス料理など異業種出身で活躍している女性職人・女将の実例が複数存在する
  • 出産・育児との両立は業態によって難易度が異なるため、老舗個人店・企業メーカー・百貨店販売・独立開業のどれを選ぶかが重要な分岐点になる
  • パート・アルバイトから始めて正社員登用や独立を目指すステップアップの道も現実的な選択肢

まずは「和菓子のパート求人完全ガイド」で身近な求人から情報収集を始めてみるか、本格的に技術を身につけたい場合は「和菓子の専門学校おすすめ7選」で進学先を比較してみることをおすすめします。

この記事は和菓子道編集部が執筆しました。和菓子道は和菓子職人のキャリアに特化した専門メディアです。詳しくは編集部についてをご覧ください。

参考情報

  • 全国和菓子協会「選・和菓子職 優秀和菓子職認定者一覧」(公式サイト、2026年9月確認)
  • 一般社団法人全国製菓衛生師養成施設協会「製菓衛生師試験の実施状況について」
  • 日経ウーマン「元ギャルが老舗和菓子店女将に 従業員との対立乗り越え」
  • 東海テレビ「SNSでカワイイと話題…芸大出身の和菓子職人は難病抱える女性」
  • 東洋経済オンライン「京都の老舗和菓子屋を救った若女将の超才覚」
  • 求人ボックス 給料ナビ「和菓子 パート」求人データ(2026年9月時点)
  • 厚生労働省 最低賃金に関する特設サイト(令和8年度地域別最低賃金改定状況)




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