茶道で9月に出す和菓子とは?主菓子・干菓子の銘一覧と選び方【2026年版】

茶道で9月に出す和菓子とは?主菓子・干菓子の銘一覧と選び方【2026年版】 和菓子と文化

最終更新: 2026-06-07

「9月の茶席にどんな和菓子を用意すればいいのだろう」と迷った経験はありませんか。9月は重陽の節句と中秋の名月という二つの大きな行事が重なり、茶道の世界では菓子選びが特に重要になる月です。この記事では、9月の茶席にふさわしい主菓子と干菓子を銘の由来とともに一覧で紹介し、行事ごとの取り合わせから購入先まで網羅的に解説します。まず9月の茶席の全体像を押さえたうえで、主菓子・干菓子それぞれの定番を確認し、最後に実際の茶会で役立つしつらえのポイントをお伝えします。

9月の茶席にふさわしい和菓子とは

9月は旧暦では「長月(ながつき)」と呼ばれ、暑さが和らぎ秋の気配が深まる季節です。茶道において、この月の菓子選びには三つの柱があります。

内容 代表的な行事
重陽の節句 9月9日。菊を用いて不老長寿を願う 着せ綿、菊酒
中秋の名月 旧暦8月15日(2026年は9月25日) 月見団子、芋名月
初秋の風情 秋の七草・虫の声・露など 萩の餅、桔梗餅

9月前半は残暑が残るため、涼しげな意匠の菓子が好まれます。中旬を過ぎると秋の深まりに合わせて温かみのある色彩へ移行するのが一般的です。茶道での和菓子の選び方の基本を押さえたうえで、9月ならではの季節感を加えていきましょう。

茶席で和菓子が重視される理由は、菓子そのものが「季節の便り」としての役割を果たすためです。掛軸の禅語、茶花、茶碗の取り合わせと一体になって、亭主の「もてなしの心」を伝えます。9月はその表現の幅が特に広い月であり、行事と季節感をどう重ね合わせるかが腕の見せどころです。

9月の主菓子一覧と銘の由来

9月の茶席で用いられる主菓子(おもがし)は、上生菓子と呼ばれる生菓子が中心です。以下に代表的な8種を、銘の由来と提供に適した時期とともにまとめます。

菓子名(銘) 由来・意匠 主な材料 適した時期 対応する行事
着せ綿(きせわた) 重陽の節句の「菊の被せ綿」に由来。菊の花に真綿をかぶせた姿を模す こなし生地、白あん 9月上旬〜9日 重陽の節句
菊襲(きくがさね) 菊の花弁が重なる様子を表現。紫や黄の色合いが特徴 練り切り、白あん 9月上旬〜中旬 重陽の節句
萩の餅(はぎのもち) 秋の七草の筆頭「萩」をモチーフにした薄紫色の餅菓子 求肥、こしあん 9月全般 秋の風情
桔梗餅(ききょうもち) 秋の七草「桔梗」の青紫色を写した透明感のある菓子 葛、白あん 9月全般 秋の風情
月見団子 中秋の名月に供える団子。関東は白い丸型、関西は里芋型にこしあんを巻く 上新粉 9月中旬〜下旬 中秋の名月
芋名月(いもめいげつ) 十五夜の別名「芋名月」にちなみ、里芋を模した菓子 きんとん、こしあん 9月中旬〜下旬 中秋の名月
鶉餅(うずらもち) 秋の野に佇む鶉の姿を写した素朴な趣の餅菓子 求肥、つぶあん 9月中旬〜下旬 秋の風情
初雁(はつかり) 秋に渡ってくる雁の姿を象った焼き菓子。「初雁」は9月の季語でもある 小麦粉生地、あん 9月中旬〜下旬 秋の風情

上記のうち、着せ綿は9月の茶席を代表する菓子として多くの茶道教室で取り上げられます。その歴史は平安時代にさかのぼり、宮中行事であった「菊の被せ綿」が和菓子の意匠として定着したものです。

なお、主菓子は濃茶(こいちゃ)の席で出されるのが正式な作法です。茶席でのマナーを事前に確認しておくと、初めての茶会でも安心して楽しめます。

重陽の節句(9月9日)と和菓子の深い関係

重陽の節句は五節句の一つで、陰陽道において最も大きな陽数「9」が重なる日です。古来より菊を用いて不老長寿を祈願する行事として知られ、節句と和菓子の意味を理解することで菓子選びの深みが増します。

「菊の被せ綿」から和菓子「着せ綿」へ

平安時代の宮中では、9月8日の夜に菊の花の上に真綿を載せ、翌9日の早朝に菊の露と香りを含んだ綿で身体を拭う風習がありました。これを「菊の被せ綿(きくのきせわた)」と呼びます。この優雅な行事にちなんで生まれたのが、和菓子の「着せ綿」です。

着せ綿の特徴的な姿は、菊の花を模した練り切りやこなし生地の上に、白い真綿を表す羊羹や練り切りの細い糸状の飾りを載せたものです。色の組み合わせには伝統的な決まりがあり、近世になると「白菊には黄色い綿、黄菊には赤い綿、赤菊には白い綿」という配色の作法が確立されました。

重陽の節句の茶席での取り合わせ

重陽の茶席では、菓子だけでなく全体のしつらえを菊で統一するのが一般的です。

要素 重陽の節句での例
掛軸 「寿山万丈高」「延年」などの長寿にちなむ禅語
茶花 菊(大輪よりも小菊が好まれる)
茶碗 菊の絵付けの茶碗、または秋草文様
主菓子 着せ綿、菊襲
干菓子 菊の打物、落雁

茶室全体で「菊」の世界観を構築しつつ、菓子がその中心的な役割を担います。亭主としては、菓子屋への注文を9月初旬に間に合うよう、遅くとも8月中旬には済ませておくことをおすすめします。

実際の茶席での体験から

重陽の茶席に参加された茶道愛好家の間では、「着せ綿の真綿部分の繊細な仕上がりに目を奪われた」という声が多く聞かれます。実際の茶席では、菓子器に載せられた着せ綿を手に取る前に、まず意匠をじっくり鑑賞する時間があります。菊の花の色と綿の色の対比、そして季節の移ろいを一つの菓子に凝縮する職人の技は、茶席ならではの体験です。9月の茶席に初めて参加する方は、菓子をいただく前に「お菓子のお銘は」と亭主に尋ねてみてください。銘を聞くことで、その菓子に込められた季節の物語がより深く味わえます。

中秋の名月と月見の和菓子

中秋の名月(十五夜)は旧暦8月15日にあたり、2026年は9月25日です(なお満月は9月27日で2日のずれがあります)。月見は茶道とも深い関わりがあり、この時期の茶席では月にちなんだ菓子が欠かせません。

月見団子の地域による違い

月見団子の作り方は地域によって大きく異なります。茶席に出す場合は、その土地の伝統に沿った形を選ぶのが基本です。

地域 形状 特徴
関東 白い丸型 上新粉で作った素朴な味わい。15個をピラミッド状に積む
関西 里芋型(しずく型) 餅にこしあんを巻き付ける。十五夜の別名「芋名月」に由来
愛知 しずく型 三色(白・茶・ピンク)で彩りを添える
沖縄 ふちゃぎ 餅に小豆をまぶした独自の形。「吹上餅」とも呼ばれる

関西の月見団子が里芋の形をしているのは、お月見の文化が平安時代に中国から伝わった当時、芋をお供えする風習があり、都が置かれた関西にその名残が色濃く残ったためとされています。

月見の茶席にふさわしい主菓子

月見団子を直接茶席に出すこともありますが、正式な茶事では上生菓子として月をモチーフにした主菓子を用いるのが一般的です。以下のような銘がよく選ばれます。

  • 「桂の月」: 月に住むとされるウサギと桂の木の伝説にちなむ
  • 「十六夜(いざよい)」: 十五夜の翌夜の月。満月からわずかに欠けた趣を表現
  • 「月の雫」: 月光に照らされた露を意匠化した透明感のある菓子
  • 「兎煎餅」: 月で餅をつく兎を焼き印で表現した干菓子

9月の干菓子の選び方と定番5種

薄茶の席では主菓子に代えて、または主菓子とともに干菓子を出します。9月に使われる干菓子には以下のようなものがあります。

干菓子 種類 意匠 おすすめの場面
菊の打物(落雁) 落雁 菊花を型押しした和三盆の落雁 重陽の節句、9月全般
萩の葉煎餅 煎餅 萩の葉の形に焼き上げた薄焼き煎餅 9月全般
兎煎餅 煎餅 兎を焼き印で描いた月見の定番 中秋の名月
鹿の子(かのこ) 有平糖 鹿の子模様を飴で表現 9月中旬〜下旬
紅葉(もみじ) 落雁 色づき始めた紅葉を表現 9月下旬

落雁の食べ方と種類については別記事で詳しく解説していますが、9月の茶席で使う場合は、菊花の打物を選ぶと重陽の節句との一体感が生まれます。

干菓子は主菓子よりも日持ちがするため、まとめて手配しやすい利点があります。ただし、湿気を吸うと食感が損なわれるため、保存には十分注意してください。

9月のしつらえと菓子の取り合わせ実例

ここでは9月の上旬・中旬・下旬に分けて、茶席のしつらえと菓子の組み合わせ例を紹介します。時期によって菓子を変えることで、同じ9月でも季節の移ろいを表現できます。

9月上旬(残暑〜重陽)

要素 組み合わせ例
掛軸の銘 「延年」「秋風一味涼」
茶花 小菊、萩、すすき
主菓子 着せ綿
干菓子 菊の打物(落雁)
茶碗 菊花蒔絵の棗、秋草文の茶碗

9月中旬(白露〜秋分)

要素 組み合わせ例
掛軸の銘 「名月一輪」「月白風清」
茶花 桔梗、女郎花、藤袴
主菓子 萩の餅、桔梗餅
干菓子 萩の葉煎餅
茶碗 月の絵柄、または秋草絵の茶碗

9月下旬(中秋の名月前後)

要素 組み合わせ例
掛軸の銘 「清風万里秋」「一輪明月」
茶花 すすき、りんどう
主菓子 月見団子(上生菓子仕立て)、芋名月
干菓子 兎煎餅
茶碗 月うさぎ文様の茶碗、萩焼

このように、同じ9月の中でも「重陽→秋草→名月」と主題を移していくことで、茶席に通う客が毎週異なる季節感を楽しめるようになります。

9月の和菓子が購入できるおすすめの和菓子店

9月の茶席菓子を手配するには、季節の上生菓子を扱う老舗に早めに注文するのがポイントです。以下は、9月の主菓子・干菓子の品揃えに定評のある店舗です。

Google Maps調べ(2026年6月時点)によると、京都市内だけで27件以上の和菓子専門店が登録されており、平均評価は4.48と高水準です。

京都エリア

  • 甘春堂(東店): 評価4.5、口コミ618件。茶席用上生菓子の品揃えが豊富で、9月は着せ綿が看板商品
  • 御菓子司 塩芳軒: 評価4.5、口コミ229件。重陽の節句に合わせた季節限定品が好評
  • 亀末廣: 評価4.5、口コミ186件。干菓子の名店で、菊の打物落雁は手土産としても人気

東京エリア

  • 日本橋 長門: 評価4.5、口コミ430件。江戸時代創業の老舗で、月見にちなんだ上生菓子が秋の定番
  • 翠江堂 本店: 評価4.5、口コミ481件。季節の練り切りが評判で、予約制の茶席菓子にも対応

金沢エリア

  • 吉はし菓子店: 評価4.6、口コミ168件。金沢の茶文化を支える名店で、9月は重陽の菓子が充実
  • 落雁諸江屋 にし茶屋菓寮: 評価4.6、口コミ220件。落雁の名店で、菊花の打物は茶人に愛されている

なお、茶席用の上生菓子は受注生産が基本です。特に9月は行事が重なるため、遅くとも2週間前には注文を済ませておくことをおすすめします。

茶道で9月の和菓子に関するよくある質問

Q1: 9月の茶席で最もよく使われる主菓子は何ですか?

9月前半は「着せ綿」が定番です。重陽の節句(9月9日)に合わせて多くの茶道教室で用いられます。9月後半は中秋の名月にちなんだ「月見団子」や「芋名月」が中心となります。

Q2: 着せ綿はどこで購入できますか?

京都の甘春堂、東京の日本橋 長門など、茶席菓子を扱う老舗和菓子店で9月初旬に限定販売されます。受注生産の場合が多いため、8月中旬までに注文しておくと安心です。

Q3: 月見団子を茶席に出す場合、関東風と関西風のどちらを選ぶべきですか?

原則として、茶会を催す地域の伝統に合わせます。関東では白い丸型、関西では里芋型にこしあんを巻いたものが一般的です。流派による指定は特にありませんが、亭主の好みや客の出身地に配慮して選ぶのも一つの心遣いです。

Q4: 9月の干菓子は主菓子と合わせてどのように選べばよいですか?

主菓子と干菓子で「テーマの統一」を意識しましょう。重陽の節句であれば主菓子に着せ綿、干菓子に菊の打物落雁を合わせます。中秋の名月なら、主菓子に芋名月、干菓子に兎煎餅という組み合わせが定番です。主菓子と干菓子で同じモチーフを繰り返さない方が、しつらえとしては洗練された印象を与えます。

Q5: 2026年の中秋の名月はいつですか?

2026年の中秋の名月は9月25日(金曜日)です。旧暦8月15日にあたります(なお満月は9月27日)。十五夜の茶会を予定している場合は、この前後に月見の菓子を用意してください。

Q6: 初心者が9月の茶会に参加する際、菓子の作法で気をつけることはありますか?

菓子をいただく前に、懐紙の上に菓子を取り、黒文字(菓子切り)で一口大に切って食べます。菓子の銘を亭主に尋ねるのは失礼ではなく、むしろ喜ばれる作法です。[茶席での和菓子のマナー](https://wagashi-do.jp/wagashi-culture/wagashi-chaseki-manner/)を事前に確認しておくと安心です。

まとめ:9月の茶席を彩る和菓子選びのポイント

9月の茶道における和菓子選びのポイントをまとめます。

  • 9月は重陽の節句と中秋の名月という二大行事があり、時期に応じた菓子選びが重要
  • 9月前半は「着せ綿」「菊襲」など菊モチーフの主菓子を中心に選ぶ
  • 9月後半は「月見団子」「芋名月」など月にちなんだ菓子へ切り替える
  • 干菓子は主菓子と「テーマの統一」を意識しつつ、同じモチーフの重複は避ける
  • 上生菓子は受注生産が基本。8月中旬までに老舗和菓子店へ注文する
  • 菓子・掛軸・茶花・茶碗の取り合わせで、茶席全体の季節感を演出する

9月の和菓子は、日本の秋の美意識が凝縮された特別な存在です。まずは次の茶席で、亭主が選んだ菓子の銘とその由来に耳を傾けてみてください。和菓子への理解が深まるほど、茶の湯の時間がより豊かなものになるはずです。

節句ごとの和菓子の意味和菓子の歴史と起源もあわせてお読みいただくと、茶道と和菓子の関係をより深く理解できます。

参考情報

  • 一般財団法人 日本educe食育総合研究所「重陽の節句にちなんだ和菓子『着せ綿』を知っていますか?」
  • 三越伊勢丹 FOODIE「中秋の名月 十五夜に食べたいお月見団子とは」
  • 茶道のあれこれ簡単解説(mame-sadou)「茶道の銘|9月」
  • 菓游 茜庵「9月(長月)の和菓子:季節の室礼、秋の七草のこと」
  • WA・TO・BI(和食の扉)「9月の和菓子—着せ綿」



コメント

タイトルとURLをコピーしました