最終更新: 2026-07-05
矢野経済研究所の調査によると、和・洋菓子・デザート類の市場規模は2023年度に前年比7.0%増の2兆4,248億円に達しました。なかでも季節限定商品の売上は年々伸びており、春の和菓子は特に人気の高いカテゴリです。「春の和菓子にはどんな種類があるのか」「いつ頃どの和菓子を楽しめばよいのか」と気になっている方も多いのではないでしょうか。この記事では、1月から5月にかけて登場する春の和菓子12種を月別に紹介し、それぞれの由来や特徴、さらに職人目線での楽しみ方まで徹底解説します。まず春の和菓子の全体像を押さえたうえで、月別カレンダー、種類ごとの比較、桜餅の東西の違い、名店ガイド、よくある質問の順にお伝えします。
春の和菓子とは?四季のなかで最も華やかな季節菓子
春の和菓子とは、春の自然や行事をモチーフにした季節限定の菓子の総称です。桜、梅、うぐいす、菜の花といった春の風物詩を色や形で表現するため、四季のなかで最も見た目が華やかになる時期といえます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 時期 | 1月下旬〜5月上旬(新年の祝い菓子から端午の節句まで) |
| 特徴 | 桜色・若草色・白など淡い色彩が中心 |
| 主な素材 | 道明寺粉、よもぎ、桜の葉、柏の葉、うぐいすきな粉 |
| 代表的な和菓子 | 花びら餅、うぐいす餅、草餅、桜餅、柏餅 |
| 関連行事 | 初釜(1月)、節分(2月)、ひな祭り(3月)、花見(3〜4月)、端午の節句(5月) |
和菓子の世界では、実際の季節より少し先取りして菓銘(かめい)を付ける慣習があります。たとえば梅の花がまだ咲いていない1月から「梅」をテーマにした和菓子が並び始めるのはそのためです。菓子職人の現場では「季節を半歩先に感じてもらうのが腕の見せどころ」といわれており、春の和菓子は新年の寒さのなかで一足早く春の訪れを届ける役割を担っています。
春の和菓子を深く理解するためには、和菓子と季節の関係を知っておくと、より楽しみが広がります。
春の和菓子カレンダー|月別に楽しむ銘菓一覧
春の和菓子は、月ごとに主役が入れ替わっていきます。以下のカレンダーで、どの時期にどの和菓子を楽しめるかを一覧で確認してみてください。
| 月 | 代表的な和菓子 | 関連行事・暦 | 店頭に並ぶ目安 |
|---|---|---|---|
| 1月 | 花びら餅、福梅 | 初釜、新年 | 1月上旬〜1月末 |
| 2月 | うぐいす餅、椿餅 | 節分、立春 | 1月下旬〜2月末 |
| 3月 | 草餅(よもぎ餅)、ひちぎり、桜餅 | ひな祭り、春分 | 2月下旬〜3月末 |
| 4月 | 桜餅、花見団子、春の上生菓子 | お花見 | 3月中旬〜4月下旬 |
| 5月 | 柏餅、ちまき、若鮎 | 端午の節句 | 4月下旬〜5月上旬 |
ここで注目したいのは、桜餅の登場期間が3月から4月と比較的長い点です。ひな祭りの時期から花見シーズンの終わりまで約2か月間にわたって楽しめるため、春の和菓子のなかでも最も長く親しまれている銘菓といえるでしょう。
春の定番和菓子12種|種類・特徴・由来を徹底比較
ここからは、春に楽しめる代表的な和菓子12種を詳しく比較します。
| 和菓子名 | 分類 | 主な素材 | 由来・特徴 | おすすめの時期 |
|---|---|---|---|---|
| 花びら餅 | 餅菓子 | 求肥、白味噌餡、ごぼう | 宮中の正月儀式「歯固めの儀」が起源 | 1月 |
| 福梅 | 干菓子・最中 | 最中皮、餡 | 梅の花を模した縁起菓子。金沢では正月菓子として定番 | 1月 |
| うぐいす餅 | 餅菓子 | 求肥、こしあん、うぐいすきな粉 | 豊臣秀吉が命名したとされる。春告げ鳥を模した形 | 2月 |
| 椿餅 | 餅菓子 | 道明寺粉、こしあん、椿の葉 | 源氏物語にも登場する日本最古級の和菓子 | 2月 |
| 草餅 | 餅菓子 | 上新粉、よもぎ、粒あん | ひな祭りの定番。よもぎの香りが春を告げる | 3月 |
| ひちぎり | 餅菓子 | 求肥、餡 | 京都のひな祭り限定菓子。「引きちぎった」形が特徴 | 3月 |
| 桜餅(長命寺) | 餅菓子 | 小麦粉生地、こしあん、桜の葉 | 1717年に長命寺の門番が考案。関東風の薄焼き生地 | 3〜4月 |
| 桜餅(道明寺) | 餅菓子 | 道明寺粉、こしあん、桜の葉 | 大阪発祥。つぶつぶした食感が特徴。全国の約7割を占める | 3〜4月 |
| 花見団子 | 団子 | 上新粉 | 桃色・白・緑の3色。花見文化とともに広まった | 3〜4月 |
| 春の上生菓子 | 練り切り等 | 白あん、求肥、着色料 | 職人の技が光る芸術品。桜や蝶など春の意匠 | 3〜5月 |
| 柏餅 | 餅菓子 | 上新粉、餡、柏の葉 | 端午の節句の定番。柏の葉は「子孫繁栄」の縁起物 | 5月 |
| ちまき | 餅菓子 | 上新粉またはくず粉、笹の葉 | 中国の端午節が起源。西日本で特に親しまれる | 5月 |
それぞれの和菓子には深い歴史と職人のこだわりが詰まっています。ここからは、特に人気の高いものを詳しく見ていきましょう。
花びら餅 ── 新年を彩る宮中由来の祝い菓子
花びら餅は、宮中で行われていた「歯固めの儀」をルーツとする格式高い和菓子です。薄く延ばした求肥(ぎゅうひ:白玉粉や餅粉に砂糖と水飴を加えて練った、やわらかく弾力のある餅生地)に白味噌餡と甘く煮たごぼうを挟んで二つ折りにした姿が特徴で、初釜の席菓子として茶道の世界でも欠かせない存在です。花びら餅の意味と作り方では、ご家庭で挑戦する際のポイントも詳しく解説しています。
うぐいす餅 ── 秀吉が名付けた春告げ菓子
うぐいす餅の名付け親は、天下人・豊臣秀吉だとする伝承が広く知られています。天正13年(1585年)、大和郡山城主であった秀吉の弟・豊臣秀長が御用菓子司の菊屋治兵衛に「珍菓を造れ」と命じ、できあがった餅菓子を秀吉の茶会で献上したところ、秀吉がたいそう気に入り「以来この餅をうぐいす餅と名付けよ」と銘を授けたとされています。求肥でこしあんを包み、青大豆からつくるうぐいすきな粉をまぶした淡い緑色の姿は、早春に鳴き始めるうぐいすそのものです。
草餅 ── ひな祭りに欠かせない春の香り
草餅は、上巳の節句(3月3日・ひな祭り)に欠かせない和菓子です。よもぎの若芽を摘んで餅に練り込む工程は、春の訪れを五感で実感できる体験でもあります。ひな祭りの和菓子の由来をもっと知りたい方は、節句ごとの和菓子の意味と由来もあわせてご覧ください。
柏餅 ── 端午の節句と「子孫繁栄」の願い
柏の葉は新芽が出るまで古い葉が落ちないことから「子孫繁栄」の象徴とされ、端午の節句に柏餅を食べる風習が江戸時代に広まりました。柏餅の本格的な作り方では、上新粉の扱い方から蒸し方まで、本格派のレシピを紹介しています。
関東風と関西風の桜餅|長命寺と道明寺を職人目線で比較
春の和菓子のなかでも桜餅は地域差が大きく、関東風「長命寺」と関西風「道明寺」で見た目も食感も大きく異なります。
| 比較項目 | 関東風「長命寺」 | 関西風「道明寺」 |
|---|---|---|
| 発祥地 | 東京・向島(1717年、享保2年) | 大阪・藤井寺市 |
| 生地 | 小麦粉を水で溶いて薄く焼いたクレープ状 | 道明寺粉(蒸した餅米を乾燥・粉砕したもの) |
| 食感 | もちっとした柔らかさ。生地は薄くなめらか | つぶつぶとした弾力のある歯ごたえ |
| 包み方 | 生地でくるりと巻く | 丸く包んで俵型に仕上げる |
| 全国シェア | 約3割 | 約7割 |
| 桜の葉 | 大島桜の塩漬け(1〜3枚) | 大島桜の塩漬け(1〜2枚) |
日本あんこ協会が実施した「全国桜餅一斉調査」(2024年)によると、関西風の道明寺が全国の約7割を占めています。コンビニやスーパーでの量産に道明寺粉の方が適しているという流通上の理由も、この差に影響しているとされています。
職人の視点で見ると、両者の最大の違いは「生地の扱い」にあります。長命寺は焼き加減のコントロールが重要で、焼きすぎると固くなり、焼きが甘いと破れやすくなります。一方、道明寺は蒸し時間と水加減が仕上がりを左右し、粉の粒度によって食感が変わるため、職人ごとに「好みの粒」があるといわれています。
桜餅を自宅で楽しみたい方は、桜餅の簡単レシピも参考にしてみてください。
春の和菓子が買える名店ガイド|三大菓子処のデータ比較
春の和菓子をより深く楽しむなら、老舗の名店を訪ねるのがおすすめです。Google Maps調べ(2026年6月時点)のデータから、日本三大菓子処である京都・金沢・松江に東京を加えた4エリアの和菓子店を比較しました。
| エリア | 登録店舗数 | 平均評価 | 平均口コミ数 | 春の名物 |
|---|---|---|---|---|
| 京都市 | 26件 | 4.47 | 435.9件 | 桜餅、ひちぎり、上生菓子 |
| 金沢市 | 21件 | 4.51 | 118.9件 | 福梅、桜餅、きんつば |
| 東京都 | 30件 | 4.31 | 272.7件 | 長命寺桜餅、草餅、花見団子 |
注目すべきは金沢市の平均評価4.51という数字です。店舗数は21件と他のエリアより少ないものの、口コミ評価は3エリア中で最も高く、一軒一軒の品質の高さがうかがえます。実際に金沢を訪れると、ひがし茶屋街や長町武家屋敷跡周辺に和菓子店が集まっており、食べ歩きしやすい環境が整っています。
京都では、甘春堂(東山区、評価4.5、口コミ624件)や福栄堂(東山区、評価4.7、口コミ349件)など、和菓子作り体験ができる店舗も人気を集めています。春の季節には桜をテーマにした上生菓子作り体験を開催する店舗もあり、職人の技を間近で学べる貴重な機会です。
東京では、向島の「長命寺桜もち」が関東風桜餅の元祖として知られています。1717年(享保2年)の創業以来300年以上にわたり、同じ場所で桜餅を作り続けている貴重な名店です。
春の和菓子をもっと楽しむ職人目線のコツ
和菓子店の現場で大切にされている「春の和菓子の楽しみ方」を5つ紹介します。
1. 季節を先取りして味わう
和菓子の世界では、季節の半歩先を楽しむのが粋とされています。たとえば桜餅は、桜が満開になるころではなく、つぼみの時期に初めて口にするのが通の楽しみ方です。職人がその年最初の桜餅を仕込む瞬間は、工房に桜の葉の香りが広がり、まさに「春が来た」と感じるときです。
2. お茶との組み合わせを意識する
春の和菓子は、お茶との相性を考えて作られています。花びら餅の白味噌餡は薄茶に、桜餅の甘さと塩気は煎茶に、草餅のよもぎの香りは番茶や焙じ茶によく合います。茶道での和菓子の選び方を参考にすると、お茶と和菓子の組み合わせがさらに楽しめます。
3. 「菓銘」に込められた物語を読む
上生菓子には「菓銘(かめい)」と呼ばれる名前が付けられています。春の上生菓子であれば「花衣(はなごろも)」「春霞(はるがすみ)」「花筏(はないかだ)」など、それぞれに日本の美意識が込められています。菓銘を知ってから食べると、一つひとつの菓子がより味わい深くなります。上生菓子とは何かで、練り切りの世界をより深く知ることができます。
4. 地域ごとの違いを食べ比べる
春の和菓子は地域性が豊かです。桜餅の関東風・関西風に限らず、ひちぎりは京都限定、福梅は金沢の正月菓子、草餅は関東では粒あん・関西ではこしあんが主流など、土地ごとの個性があります。旅先で地元の春の和菓子を見つけたら、ぜひその土地ならではの味を楽しんでみてください。
5. 手土産として活用する
春の和菓子は、季節感のある手土産としても優秀です。「今の時期だからこそ」という限定感が相手への心遣いを伝えてくれます。花見の席への差し入れには花見団子、新年の挨拶には花びら餅、ひな祭りの手土産には草餅や桜餅を選ぶと、季節の行事にぴったりの贈り物になります。
春の和菓子に関するよくある質問
Q1: 春の和菓子はいつから店頭に並びますか?
早いものでは1月上旬から花びら餅が登場します。桜餅は2月下旬から3月にかけて、柏餅は4月中旬ごろから並び始めるのが一般的です。ただし、和菓子店によって時期は異なるため、お目当ての商品がある場合は事前に店舗へ確認するのがおすすめです。
Q2: 桜餅の葉は食べてもよいのですか?
食べても食べなくても、どちらでも構いません。桜の葉の塩漬けは餅に桜の香りを移す目的で巻かれており、葉ごと食べると塩気と甘さのバランスを楽しめます。ただし、葉の筋が気になる場合は外して食べるのが一般的です。和菓子店によっては「葉ごとお召し上がりください」と案内しているところもあります。
Q3: 春の和菓子の賞味期限はどのくらいですか?
生菓子(桜餅、草餅、うぐいす餅など)は当日〜翌日が目安です。上生菓子も当日中が理想とされます。一方、干菓子の福梅や落雁タイプの和菓子は1〜2週間程度日持ちします。贈り物にする場合は、日持ちの長い干菓子タイプを選ぶと安心です。
Q4: 自宅で春の和菓子を作るなら何が簡単ですか?
初心者の方には草餅がおすすめです。よもぎパウダーを使えば下処理の手間がなく、上新粉と混ぜて蒸すだけで本格的な草餅が作れます。市販の粒あんを使えば、所要時間は約30〜40分程度です。桜餅(道明寺タイプ)も道明寺粉を水で戻して電子レンジで加熱する方法なら、比較的手軽に挑戦できます。
Q5: 春の和菓子を英語で説明するにはどう言えばよいですか?
「Japanese spring sweets(日本の春の菓子)」が基本的な表現です。桜餅は「cherry blossom rice cake」、草餅は「mugwort rice cake」、花見団子は「cherry blossom viewing dumplings」と説明すると伝わりやすくなります。海外からの観光客に人気が高まっているため、英語での説明も覚えておくと役立ちます。
Q6: ひな祭りに草餅を食べるのはなぜですか?
よもぎには古来より邪気を払う力があると信じられており、上巳の節句(3月3日)に草餅を食べる風習が生まれました。もともとは「母子草(ハハコグサ)」を使っていたのが、平安時代以降によもぎに替わったとされています。現在でもひな祭りの定番として受け継がれています。
Q7: 関東と関西で桜餅以外にも違いがある春の和菓子はありますか?
あります。たとえば端午の節句の定番は、関東では柏餅、関西ではちまきが主流です。草餅の中身も、関東では粒あん、関西ではこしあんが好まれる傾向があります。また、京都にはひな祭り限定の「ひちぎり」という和菓子がありますが、関東ではほとんど見かけません。地域ごとの食文化の違いが、春の和菓子にも色濃く表れています。
まとめ:春の和菓子で日本の四季を味わう
春の和菓子について、この記事のポイントを整理します。
- 春の和菓子は1月の花びら餅から5月の柏餅まで、約5か月にわたって楽しめる
- 月ごとに主役となる和菓子が入れ替わり、行事や暦と深く結びついている
- 桜餅は関東風「長命寺」と関西風「道明寺」があり、全国的には道明寺が約7割を占める
- 三大菓子処(京都・金沢・松江)では、地域ならではの春の銘菓を楽しめる
- お茶との組み合わせや菓銘を意識すると、春の和菓子をより深く味わえる
春は和菓子の世界が最も華やかになる季節です。まずはお近くの和菓子店で、今の時期ならではの一品を手に取ってみてはいかがでしょうか。
和菓子の種類や歴史についてさらに詳しく知りたい方は、和菓子の種類を網羅した一覧ガイドや和菓子の歴史と起源もあわせてご覧ください。また、和菓子業界の最新データは和菓子業界データまとめで定期更新しています。
参考情報
- 矢野経済研究所「和・洋菓子、デザート類市場に関する調査(2025年)」 — 市場規模データの出典
- 日本あんこ協会「第一回全国桜餅一斉調査(2024年)」 — 桜餅の関東風・関西風の全国分布データ
- Google Maps調べ(2026年6月時点) — 三大菓子処の店舗数・評価データ
- 一般財団法人 日本educe食育総合研究所 — うぐいす餅の歴史・豊臣秀吉の命名に関する情報
- 暦生活「旬のもの」 — 草餅・うぐいす餅の季節・由来に関する情報
- 農林水産省「にっぽん伝統食図鑑 御城之口餅」 — うぐいす餅(菊屋治兵衛)の歴史・由来
- 全国菓子工業組合連合会「源氏物語が伝えた和菓子・椿餅」 — 椿餅の歴史的背景


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