最終更新: 2026-10-13
鳥取県の和菓子は、鳥取市・倉吉市・米子市という県内の異なる3都市に、江戸末期から明治にかけて創業した老舗がそれぞれ根を張っているのが特徴です。経済産業省・総務省の経済構造実態調査(2022年、品目編)によると、鳥取県の和生菓子出荷額は6,196百万円・19事業所で、全国47都道府県中26位です(e-Stat調べ、2022年時点)。事業所数は全国で8番目に少ない一方、1事業所あたりの出荷額は約326.1百万円で、全国平均(約259.9百万円)の約1.25倍です。
この記事では、慶応4年(1868年)創業の亀甲や、明治13年(1880年)創業の石谷精華堂、明治12年(1879年)創業の米仙堂という3つの老舗を、統計データとあわせて紹介します。事業所数が少ない中でも一定規模を保っている「中間的な集中型」の産業構造の中で、各都市の老舗が異なる由来を持つ銘菓を守り続けている点が、鳥取の和菓子文化の特徴です。
鳥取県の和菓子事情を数字で見る

経済産業省・総務省の経済構造実態調査(2022年、品目編)から、鳥取県の和生菓子産業の規模を確認します。
| 項目 | 鳥取県 |
|---|---|
| 和生菓子 出荷額 | 6,196百万円(全国26位/47) |
| 和生菓子 産出事業所数 | 19事業所(全国で8番目に少ない) |
| 1事業所あたり出荷額 | 約326.1百万円 |
全国平均(出荷額合計450,715百万円÷事業所数合計1,734事業所)は1事業所あたり約259.9百万円のため、鳥取県の1事業所あたり出荷額は全国平均の約1.25倍です。これまで紹介した秋田県(全国平均の0.29倍、小規模分散型)と茨城県(全国平均の2.1倍、高集中型)の中間に位置する水準で、事業所数は少ないものの極端な集中度ではない構造です。業界全体の都道府県別ランキングは和菓子業界の統計まとめページでも確認できます。
産業規模は中間的でも、3都市それぞれに老舗が根付く理由

出荷額データでは鳥取県の和菓子産業は全国的に中位から中規模ですが、実際に老舗を調べていくと、鳥取市・倉吉市・米子市という県内の異なる3都市に、江戸末期から明治初期創業の店がそれぞれ根付いている点が目立ちます。和菓子の歴史をたどると、地方の和菓子店は城下町や宿場町、街道沿いの商業地を中心に発展したケースが多く、鳥取県内でも鳥取城下(鳥取市)、打吹山のふもと(倉吉市)、山陰の交通拠点(米子市)という、それぞれ異なる成り立ちを持つ土地で老舗文化が育ってきました。
「亀甲や」— 慶応4年創業、宮内省御用達の老舗

亀甲やは、慶応4年(1868年)に鳥取県鳥取市片原で創業した老舗です。ルーツはさらに古く、1632年(寛永9年)に鳥取藩主の国替えに伴って岡山県の亀甲(かめのこう)から鳥取へ移住した染物屋にあり、1868年に亀甲形の最中種を使った「亀甲もなか」の製造を始めたことが菓子店としての創業となりました。
代表銘菓の「亀甲もなか」は、創業以来の味と製法を変えずに作り続けている看板商品です。大正4年(1915年)と昭和3年(1928年)には宮内省御用達の栄誉を受けています。また大正11年(1922年)には、栽培が難しかった二十世紀梨を全国に知ってもらいたいという思いから、梨を輪切りにした姿を再現した乾燥ゼリー菓子「二十世紀」を考案しました(実際の梨の果汁・果肉は使用せず、水飴・砂糖・寒天・寒梅粉・香料で作られています)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 店名 | 亀甲や |
| 創業 | 慶応4年(1868年) |
| 所在地 | 鳥取県鳥取市片原2-116 |
| 代表銘菓 | 亀甲もなか、二十世紀(梨をモチーフにした乾燥ゼリー) |
江戸時代の染物屋というルーツから菓子店に転じ、大正期に2度の宮内省御用達を受けた歴史を持つ点が、亀甲やの特徴です。
「石谷精華堂」— 明治13年創業、南北朝の伝説に着想を得た「打吹公園だんご」

石谷精華堂は、明治13年(1880年)に鳥取県倉吉市幸町で創業した老舗です。代表銘菓「打吹公園だんご」のルーツは南北朝時代にさかのぼり、後醍醐天皇を船上山で迎えた武将・名和長年公が「甘茶だんご」をふるまったという話に着想を得て、初代・石谷すまが作ったのが始まりとされています。現在の三色だんごの形は、明治40年に皇太子(後の大正天皇)が打吹公園を訪れた際に合わせて生まれました。
地元のもち米粉に砂糖と水飴を加えて丁寧に練り上げた餅を、白餡・小豆餡・抹茶餡の三色で包んだ串だんごで、防腐剤は使用せず日持ちは3日間のみです。地元では「公園だんご」の名で親しまれています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 店名 | 石谷精華堂 |
| 創業 | 明治13年(1880年) |
| 所在地 | 鳥取県倉吉市幸町459番地1 |
| 代表銘菓 | 打吹公園だんご(白餡・小豆餡・抹茶餡の三色だんご) |
南北朝時代の伝説に着想を得た由来と、明治40年の皇太子訪問で今の三色の形が生まれたという2段階の歴史を持つ点が、石谷精華堂の特徴です。
「米仙堂」— 明治12年創業、全国菓子博覧会で受賞歴を持つ米子の老舗

米仙堂は、明治12年(1879年)に創業者・寺崎吉太郎が鳥取県米子市で開業した老舗です。「山は大山、いで湯は皆生、御菓子は米子の米仙堂」というキャッチフレーズで地元に知られています。
看板商品の「米子饅頭」は明治44年(1911年)の全国菓子飴展覧会で金牌を受賞し、代表銘菓「白羊羹」と「十八万石」は昭和32年(1957年)の第14回全国菓子大博覧会で、白羊羹が名誉金賞、十八万石が壱等賞を受賞しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 店名 | 米仙堂 |
| 創業 | 明治12年(1879年) |
| 所在地 | 鳥取県米子市上福原1465-2 |
| 代表銘菓 | 米子饅頭、白羊羹、十八万石 |
明治期創業から全国規模の菓子博覧会で複数の受賞歴を積み重ねてきた点が、米仙堂の特徴です。
鳥取の銘菓はどこで買える? 選び方のポイント
| シーン | おすすめの店 | 選び方のポイント |
|---|---|---|
| 鳥取市で宮内省御用達の歴史を味わいたい | 亀甲や(亀甲もなか・二十世紀) | 慶応4年創業、大正期に2度宮内省御用達 |
| 倉吉観光のお土産に由緒ある菓子を探したい | 石谷精華堂(打吹公園だんご) | 明治13年創業、南北朝時代の伝説に着想 |
| 米子で受賞歴のある菓子を試したい | 米仙堂(米子饅頭・白羊羹・十八万石) | 明治12年創業、全国菓子博覧会で複数受賞 |
いずれも江戸末期から明治初期にかけてのルーツを持ち、鳥取市・倉吉市・米子市という県内の異なる土地でそれぞれの由来を持つ菓子を守っています。宮内省御用達の由緒を味わうなら亀甲や、伝説に着想を得た由来を楽しむなら石谷精華堂、受賞歴のある味を試すなら米仙堂と、目的に応じて選んでみてください。和菓子選びに迷ったときは和菓子の選び方ガイドもあわせて参考にしてください。
編集部メモ: 統計データだけを見ると、鳥取県の1事業所あたり出荷額は全国平均の約1.25倍と、これまで紹介した秋田県(0.29倍)と茨城県(2.1倍)の中間に位置する、特に極端ではない数値でした。ただ実際に老舗を調べてみると、鳥取市・倉吉市・米子市という3都市それぞれに、宮内省御用達、南北朝時代の伝説、全国菓子博覧会での受賞歴という異なるタイプの由緒を持つ老舗が根付いていることがわかりました。統計上の「中間的な数値」の裏に、個々の老舗の由緒の濃さがあるという点が、今回調べていて意外でした。
鳥取の和菓子に関するよくある質問
Q1: 鳥取を代表する和菓子は何ですか?
亀甲やの「亀甲もなか」、石谷精華堂の「打吹公園だんご」、米仙堂の「米子饅頭」「白羊羹」「十八万石」などが挙げられます。
Q2: 「打吹公園だんご」とはどんな菓子ですか?
南北朝時代の伝説に着想を得て石谷精華堂が作り始めた三色だんごで、もち米粉を練った餅を白餡・小豆餡・抹茶餡で包んだものです。現在の三色の形は明治40年の皇太子訪問時に生まれ、防腐剤不使用で日持ちは3日間です。
Q3: 亀甲やはどんな歴史を持つ店ですか?
慶応4年(1868年)創業で、ルーツは1632年に岡山県の亀甲から鳥取へ移住した染物屋にあります。大正4年と昭和3年に宮内省御用達の栄誉を受けており、梨をモチーフにした「二十世紀」という菓子も考案しています。
Q4: 米子でお土産を買うならどこがおすすめですか?
明治12年創業の米仙堂が米子市で営業しており、金牌・名誉金賞・壱等賞といった全国菓子博覧会での受賞歴を持つ米子饅頭・白羊羹・十八万石を扱っています。
Q5: 鳥取県は和菓子の生産が盛んなのですか?
経済産業省の経済構造実態調査(2022年)によると、鳥取県の和生菓子出荷額は6,196百万円で全国26位、1事業所あたりの出荷額は全国平均の約1.25倍と、事業所数が少ない中で一定規模を保っている構造です。
関連記事: 岩手の和菓子おすすめ完全ガイド|2度の津波を越えた老舗と内陸の銘菓3店を解説
まとめ: 鳥取の和菓子は、中間的な産業構造の中で3都市の老舗が異なる由緒を守る
- 鳥取県の和生菓子出荷額は6,196百万円(19事業所)で全国26位。1事業所あたりの出荷額は全国平均の約1.25倍と、秋田県(0.29倍)と茨城県(2.1倍)の中間的な構造です(経済構造実態調査2022年)。
- 亀甲や(慶応4年創業)は、大正期に2度の宮内省御用達を受けた「亀甲もなか」を、鳥取市で作り続けています。
- 石谷精華堂(明治13年創業)は、南北朝時代の伝説に着想を得た「打吹公園だんご」を、倉吉市で守っています。
- 米仙堂(明治12年創業)は、全国菓子博覧会での受賞歴を持つ米子饅頭・白羊羹・十八万石を、米子市で作り続けています。
鳥取の和菓子は、産業規模としては中間的な一方、鳥取市・倉吉市・米子市という異なる土地で、宮内省御用達・歴史伝説・博覧会受賞という異なるタイプの由緒を持つ老舗が今も営業を続けているのが特徴です。宮内省御用達の由緒を味わうなら亀甲や、倉吉観光とあわせるなら石谷精華堂、受賞歴のある味を試すなら米仙堂と、目的に応じて選んでみてください。
この記事は和菓子道編集部が執筆しました。和菓子道は和菓子職人のキャリアと和菓子文化に特化した専門メディアです。
詳しくは編集部についてをご覧ください。
参考情報
- 経済産業省・総務省「経済構造実態調査」2022年(e-Stat 政府統計の総合窓口、https://www.e-stat.go.jp/)
- 全国菓子工業組合連合会「亀甲や」(https://zenkaren.net/archives/23947)
- 老舗map「亀甲やの鳥取ブランケーキ」(https://shinise.tv/kikkoya-tottori/)
- いずも庵「亀甲やの銘菓 二十世紀」(https://izumoan.com/view/item/000000000238)
- na-na.media「鳥取の定番土産、明治生まれのロングセラー『打吹公園だんご』」(https://na-na.media/utubukikouendango_kurayoshi/)
- Wikipedia「打吹公園だんご」(https://ja.wikipedia.org/wiki/打吹公園だんご)
- 米仙堂公式サイト「会社概要」(https://beisendou.jp/help/about)
- 老舗map「米仙堂の十八万石と高原焼」(https://shinise.tv/beisendo-yonago/)


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